「東宝映画」1965年12月号より
夢は大きく!期待の三新人
高橋紀子・沢井桂子・黒沢年男


写真左から、高橋紀子さん・沢井桂子さん・黒沢年男さん


東宝の明日を築く新しい人たち、'66年のホープとして12人の新人←【注】が去る11月12日、撮影所で華々しく紹介されたことは皆さん新聞や週刊誌でご存知のことと思います。そこで、本誌ではその先人を承って『怪獣大戦争』の沢井桂子さん、『エレキの若大将』の黒沢年男さん、『無責任清水港』の高橋紀子さんと、いずれもニュー・タレント四期生の仲良し三人組に登場していただき、未来に賭ける大きな夢を若人らしくお互いに思う存分話し合ってもらいました。

【注】酒井和歌子、豊浦美子、井上紀明(『マイティジャック』寺川隊員役)、沢井桂子、田村亮、内藤洋子、原恵子、黒沢年男、高橋紀子、満田新二、那須ますみ、松本めぐみ(順不同、敬称略)。

揃ってお正月映画に

黒沢 しばらく。

高橋 お元気?

黒沢 まあね。エネルギーが過剰気味ってところかな。お休みが続きすぎて。

沢井 でも、ずいぶん長い間、宝塚の撮影所に行ってたんじゃないの?

黒沢 それは三ヶ月も前のことだよ(笑)。

高橋 でも、テレビで見た「まごころ」の黒沢くん、すごく良かったな。ちょっとしゃくにさわったくらいよ。

沢井 ほんとね。一緒にでてらっした方たちがベテランだから、ずいぶん勉強になったでしょ。

黒沢 うん。伊藤雄之助さん、浪花千栄子さんとか、エライ人たちばかりだろ、最初は固くなっちゃってしまって・・・。だけど皆親切でね。ああいう名優の中でもまれると、すごく勉強になるなあ。

高橋 沢井さんはいま『怪獣大戦争』ね。

黒沢 新人が怪獣ものに出ると、大物になれるってジンクスが東宝にはあるっていうけど、そうすると沢井くんは東宝の大ホープってわけだな。

沢井 みんなからそんなこと言われるんで、わたし責任が重いわ。

黒沢 高橋くんも『無責任清水港』で、大活躍だろ?

高橋 黒沢さんは『エレキの若大将』で、若大将に負けずにエレキを鳴らすんじゃないの?

沢井 三人ともお正月映画に出られてシアワセってとこね(笑)


暇なときは?

高橋 黒沢さん、音楽はもともとお得意だったわね。

黒沢 小さいときから好きだったからね。うちでは弟たちとバンド作ってるんだ。パートはエレキじゃなくてドラムだけど。とにかく来年こそは勝負の年と思ってがんばるつもりだよ。

沢井 そんなとき、お仕事がないとほんとに悲しいわね。

黒沢 ほんと、イライラしちゃって・・・。ぼくみたいに発散型の男は余計いけないね。

高橋 わたしは、以前は仕事があるっていうと、気が重くていやだったのよ。けれど、この頃は、仕事が無くて遊んでいるのがいやになってきた・・・。欲が出たっていうのかしら?だから、誰か知ってる人が映画でもテレビでも、出てるっていうと必ず見るわ。うまいとシャクにさわって、ものすごくファイトが湧く・・・。

黒沢 凄えなァ(笑)

沢井 暇なときは何してる?

黒沢 映画や芝居を見てまわるんだ。その後で、気に入った俳優の真似をする。ポール・ニューマンはマーロン・ブランドの真似して大物になったっていうし、ぼくも自分にこの役が与えられたら、というつもりでまねしながら、自分の精一杯を出そうと思っているんだ。

沢井 それじゃあ暇が暇でなくなってしまうわねえ。

黒沢 そんな、いくらなんでも起きてから寝るまで、ニューマンや三船さんの真似してられないよ(笑)。これで充分プライベート・タイムを楽しんでるよ。夜、自動車をすっ飛ばしたり・・・。沢井くんは何してる?

沢井 私は映画みたり、本を読んだり。最近はもっぱら推理もの。高橋さんは?

高橋 そうねえ、ボーリングに読書ってとこかな。これで太宰治のファンよ。

友だちと先輩と

沢井 お友だちはどう?

高橋 同じ年代のグループと話し合うの、いろんなことが吸収できるからいいわ。

黒沢 ぼくは孤独だ。友だちがいないんだ(笑)

高橋 どうして?つくればいいのに。

黒沢 俳優同士って非情だからなあ。

高橋 あら、同じお仕事をもっているお友だちっていいと思うけど・・・。

黒沢 先輩はいいんだ。同じ立場だとどうもね。しかし、東宝の先輩はいいよね。三船さんといったら大先輩だけど、去年『侍』の殺陣でぼくがちょっと怪我したときなんか二度もお見舞いに来てくれてすっかり恐縮しちゃったよ。それがちっとも恐縮なんかしなくってもいい態度で来られちゃうだろ、つい甘えたくなってしまう感じなんだなあ。ほんとにすばらしい人だね、三船さんは。女だったら結婚したいくらいだな(笑)

高橋 すごい惚れこみようね。

沢井 わかるわ、その気持。ほんとに東宝には尊敬できる先輩がたくさんいて・・・。

高橋 そりゃ先輩ってほんとに有難い存在よ。わたしだって、テレビ映画の「ウルトラQ」で、久保明さんにすごくお世話になったのよ。たとえば、ラブシーンなんか慣れてないからついテレちゃうでしょ、それを久保さんはさっきまで冗談言い合っていても、いざとなるとパッと切り替えて、その雰囲気にしてくれるの。意地悪な人だと新人を困らせたりなんかする人がいるって聞いてたけど、東宝にはそんな人いないものね。

黒沢 それに甘えてすがってばかりいてはいけないけど、どうも同じ連中だと蹴飛ばしあったりするじゃない?世の中は非情なのが当たり前って言うけど、それじゃあんまり・・・。

高橋 非情の中にだって友情はあると思うわ。早くいいお友だちを作りなさいよ(笑)

こんな役を!

黒沢 沢井くんは映画は何が一番最初だった?

沢井 『日本一のホラ吹き男』でチョッピリ。お姫様になってはじめてかぶったカツラの痛かったこと・・・。

高橋 それが思い出?(笑)わたしは『三人寄れば』で雪村さんが美容師、そのインターン。ただセットの中を行ったり来たりだけだった。黒沢さんも『三人寄れば』が最初だったのね。

黒沢 ああ、チエミさんの弟役をもらって、うれしかったな。ところで、これから、どんな役をいちばんやってみたい?

高橋 ほら、中川ゆきさんがやった『愛して愛して』の少女のような役。

沢井 わたしはメロドラマ。『慕情』とか『哀愁』といったような徹底したメロドラマをやってみたいと思うわ。今の時代にはメロはダメだって言われてるけれど、ただお涙ちょうだいの安っぽいものじゃなく、ストーリーのしっかりしたものだったら、やはり若い人には魅力あると思うんだけど。それから明治ものもいいと思うわ。

黒沢 ぼくは断然三船さんの椿三十郎みたいな役。それから、汚れ役の悪党、人間的な弱いところをもった・・・。それからまだあるんだ、『エデンの東』や『ジャイアンツ』のジェームス・ディーンの役。ディーンも良いけど、あのやった役がいいんだ。抑えるよりぶっつけるような役。ひかえめな芝居だとか、歯の浮くようなラブ・シーンは正直ぼくの性に合わないんだ。テレちゃうよ。

高橋 そうね。第一、若いうちはあんまり陰にこもったお芝居よりも、身体中のエネルギーを発散させるようなものがやりいいと思うわ。

黒沢 そうだよ、思い切り、それこそさ、八方破れみたいに、芝居だって暴れまわるような芝居をやってるうちに、身についた演技というものを身体で覚えこんでゆくんじゃないのかな。今から小林桂樹さんだの、森繁さんのような芝居をしろったって、できるわけないもの。

沢井 だけど、演技だとか、お芝居とかって、簡単に言うけど難しいものねえ。

高橋 ほんとねえ。せっかく、映画やテレビに出て、何か、あ、そうか、こうやればいいのか、なんて演技について判ったような気持になるときがあるでしょ。それで、今度、お仕事いただいたら、こうして、なんて張り切ってきても、一ヶ月も二ヶ月も遊んじゃったりすると、もうダメね。

黒沢 ジャンジャン出してもらってね、そうすれば、ぼくたちも必死でやれるし、やらなきゃならない・・・。

高橋 そうして、三船さんみたいになる。

黒沢 そうさ!(笑)



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