「東宝映画」1966年11月号より
 スターと話せば(連載第53回)
頑張れ!新星 松本めぐみ・原恵子


写真左が松本めぐみさん、右が原恵子さん。

(「東宝映画友の会」川崎支部の会員である大内氏・白田氏のお二人の青年と、松本めぐみさん・原恵子さんの対談)

ただいま撮影中

 川崎の会員の方ですって?

大内 そう、僕は田舎は仙台です。けど、今は川崎に住んでいます。勤めも川崎。

白田 僕もです。

 川崎は懐かしいんですよ。デビューの時、初めて川崎の劇場でご挨拶に行って・・・。

白田 そういえば、劇場の廊下に原さんのポスターが貼ってありましたよ。

(中略)

 東宝映画はなんでもご覧になりますか?

大内 やはり、つまらないのは見ませんよ。この間の『他人の顔』は面白かったですね。

松本 ほかには?

白田 僕は毎週観ていますけど、『沈丁花』がよかったですね。今お二人の映画は?

 二人とも加山さん主演の『お嫁においで』に出ています。

松本 その前は日劇の舞台で、やっぱり一緒だったの。

白田 どんな役ですか?

 わたしは魚屋の娘で、黒沢年男さんが好きなんです。彼はタクシーの運転手で、結局振られちゃうんですけど・・・・。長靴にGパンというスタイルで勇ましいんですよ。

白田 あまりピンとこないな。原さんて、熱帯魚みたいな感じだけど。

 魚屋さんというのは、自分でもピンと来ないんだけど、自分にないものをこなすのも俳優としての楽しみの一つですわ。

松本 原さんは、ほんとはおっとりしたお嬢さんだから・・・。

 それが災いしているのよ。

松本  そんなことないわ、わたしなんか少しこせこせしすぎているから、ゆったりとしたお嬢さまムードにあこがれているのよ。

 そんなことないわ。めぐみちゃんは若いのになかなかしっかりしているから、少し見習わなくちゃと思っているのよ、日劇で一週間一緒にいて、とてもよくわかったわ。

白田 松本さんはどんな役?

松本 わたしの方は、お金持ちの御曹司で造船技師の加山さんを振って、黒沢君と結婚しちゃう沢井(桂子)さんのお友達という役。わかったかしら?みんな若い人たちばかりだから気持がいいんですよ。


こうして映画界へ

白田 お二人とも映画界へ入られた動機は?

松本 わたしは八年位バレエをやっていたんです。でもクラシックで身を立てるのは日本ではとても難しいんです。それでチャンスを狙っていたら、CMソングのコンテストがあったから応募したら受かっちゃったの。それでテレビに足を入れているうちにドラマの方で「七人の孫」とか「さぼてん」なんかに出るようになって東宝のテレビ部に入ることになって、だから私は本当はテレビ俳優。でも東宝は映画もテレビも一緒だから・・・・。

 私は宝塚歌劇にいたとき映画入りをすすめられて東宝に入ったんですけど。

大内 この世界は、色々大変なんでしょ。

松本 学校卒業して、普通のBGになって結婚して、平凡な幸せっていうのか、そういうの分かるんだけれど、若いうちに何でもやりたいことやろうと思って。芸能界は風当たりもきついし、浮き沈みも多いから、辛いことは辛いけど、やっぱり好きなんですね。私は男の子に生まれた方がよかったと思っているんです。だから行動力がスゴく旺盛で、失敗することもありますが、思い立ったら飛び込んでいっちゃうんです。失敗してもグチらないことにしてますけど、負けん気が強いんで困ります。

 私は宝塚に入ったのは勿論舞台に立ちたいということなんですけど、それとは別に他人のご飯を食べて人生修行をしようという目的もあったのよ。寮に入って女ばかりの団体生活をして、女同士の色々いやな面の苦労をして、その中で駄目になりたくないと思いました。だから、映画に移っても初心忘るべからずっていうのかしら、その気持を大事に一生懸命やるつもりですわ。

大内 芸名は自分で・・・・?

松本 私は本名が松本美恵子っていうんですよ。だから恵だけとって平仮名にしたの。

 私は宝塚でしょ。あそこは昔から百人一首やなんかからとって、難しい名前が多いんですけど、今はそうこだわらないのね。でも私は環枝織(サオリ)←【注1】っていったんですけど中国人みたいだし、映画向きじゃないから本名にしちゃったの。

白田 結婚しても続けるのですか?

松本 私はやめちゃいます。やめていい奥さんになって彼に尽くします。まだ誰も決まっていないけど・・・。

 私は分からないわ。そのときによりますね。ただ中途半端にはなりたくないと思いますわ。

松本 私結婚にすごく憧れているの。そういう年頃なんですね。だから期待も大きいし、その前に恋愛もしなきゃいけないなんて思ったりして・・・・。

大内 理想の男性は・・・・。

松本  私まだ未成年のせいかずっと年上の人が好きなんです。甘えちゃいたいのかな?

 私なんか、まだ男性となると気を使うから面倒で、女の友達の方がいいわ。年は下だけどめぐみちゃんの方が男性を見る目も大人のようね。

松本  あら、やだわ。男性暦が豊富みたい。

 男の人ってまだ私には未知の方が多いから・・・・。

松本 芸能人はいやだわ。今のところ・・・・。

 私は、まだ分からない。お互いに信頼しあえて、私を分かってくれる人だったら・・・。

松本 男の人って口が上手いけど、イザとなると裏切る人もいるから気をつけないと。

 やっぱりあなたの方が知識が豊富のようよ。

【注1】宝塚の資料では「環木織」(たまきしおり)となっている。原恵子さんのプロフィールのページも参照(kenro)。


映画とテレビと

白田 映画の方は、まだ日が浅いのですがご感想は?

松本 内容については分からないけど、時間的には楽ですね。

 映画は定時に終わるし、日曜はお休みだし、きっちりしていますね。

松本 テレビだと夜も昼も見境なしですから・・・。

大内 テレビは今なにですか?

松本 「青春とはなんだ」に出ています。←【注2】

白田 原さんは?

 私はテレビはあまり出ておりませんの。以前に「新三等重役」に出ましたが、これはテレビ映画だったので、今度テレビに出られるんでしたらスタジオドラマに出たいわ。

白田 「青春----」は前の続きなんですか?

松本 内容は同じようなもので、前のは山間の学校だったけど、今度のは海辺の学校になるんです。

 じゃ、泳ぐのね。

松本 これから寒くなるでしょ。それに水着、自信ないわ。

大内 どんな役がやりたいですか。

 大人のムードのある役をやりたいですね。日本のドラマって割合に現実的なものが多いでしょ。もっと雰囲気というかムード気のあるものをね。それに役としては個性的なものを。

白田 よろめきドラマの人妻なんてどうですか?

 そうね。でも、ちょっとまだ早いでしょ。

松本 未亡人なんてどう?

 まあひどい!自分が18歳なもんで、人のことおばあさん扱いにするんですよ。

松本 私フランソワーズ・サガンの「悲しみよ、こんにちは」なんてやりたいわ。それにメロドラマなんかも・・・・。今のところ年齢的にも性格的にも地でやれる役ばかりだから、恋をしたり悩んだりする大人の役がやりたいわ。

【注2】松本めぐみさんが「青春とはなんだ」と言っているのは、実際にはその続編の「これが青春だ」のことだと思われる(kenro)。


すべて努力と思います

大内 暇の時はどうなさっているんですか。

 読書をしたり映画やお芝居を観たり、レコードを聴いたり、今発声の練習とギターを習っているんです。

白田 フラメンコですか。

 あれは難しくて。

松本 私テレビが忙しくて体がなかなか空かないんですけど、アテネ・フランセに籍を置いてフランス語を習っているんですよ。あとはバレエと歌のレッスン、暇があったら泳ぎに行きたいわ。

大内 原さん、宝塚時代には色々お稽古をやったんでしょ。

 あの頃は、毎日毎時間がお稽古の連続ね、遊ぶ暇なんかないし、すべてのことが稽古につながっているから。

大内 同時代の人と違って、そういうことで遊べなかったのは、どう感じられます。

 それはそれなりの楽しみがあります。芸事というのは身につくことですし、その過程で一種の人生教訓のようなことも得られるし、一つのことを探求して到達したときの喜びっていうものは大きいです。遊びの楽しみも確かに楽しみですけど、先に残しておいても遅くはないと思いますわ。私だって、まだ若いんですから。

松本 こういう職業をしていると一般の方には経験できない苦しみが多いんですけど、反面、得るところも大きいと思いますね。

 失敗も何度かあると思うんですけど、決定的なマイナスにならなければ、経験として、それもいいんじゃないかと思うの。

松本 努力に努力を重ねてね。普通の人だって、結婚して死ぬまで努力を重ねることに変わりはないでしょ。

 そういう点、こういう職業の人は我慢強いわね。

大内 僕達サラリーマンとして大変参考になる話ですよ。

松本 油断すればすぐ取り残されてしまう。

白田 追いつかなきゃならない先輩はたくさんいるし・・・。

 そう思っていても、私って割とのんびり屋さんですから。

松本 だから我慢強くなってしまうのよ。

大内 では、どうも、色々楽しくって、人生のためになる話をありがとう。

白田 これからも、若いファイトで頑張って大スターになってください。これを機会にファンとして応援しますから。 




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