東京バイパス指令

第5話「恐喝(かつあげ)」


ファミリー劇場では何度か放送されていた番組です。今回(1998年10月)またベルトアワーで放送が始まりました。本放送開始は昭和43年11月8日なので、ちょうど小林夕岐子さんが『怪獣総進撃』で本格デビューを飾った時期と重なり、出演の可能性は非常に高いと予想していましたが、早くも第5話で発見することができました。


予告編ナレーション(中江真司)

結婚を目前に自殺した本州製鉄社長令嬢。大学の学長選を目前に、恐喝される教授夫人。謎を包む高級スーパーマーケットとの関係は。もし、ある日突然、あなたが恐喝されたら・・・。スリルとサスペンスで描く次週「恐喝(かつあげ)」にご期待下さい。

この予告編、いきなり悲痛な表情をした小林夕岐子さんが高所から飛び降りるカットから始まります。次に登場する教授夫人を演じたのは村松英子さんですが、予告編に映る姿は小林夕岐子さんによく似ていて、最初に見たときは、小林夕岐子さんは社長令嬢と教授夫人の二役か?と思ってしまいました。


本編ストーリー

暴力団あがりで現在はスーパーの警備員をしている川辺(杉田康)は、女性客の買い物カゴに商品を忍ばせ、万引きの濡れ衣を着せてはそれをネタに金を要求していた。本州製鉄の社長令嬢もその被害者で、彼女は川辺に散々金を巻き上げられた挙句、将来を悲観して列車に飛び込み自殺してしまう。南郷(夏木陽介)・槙(竜雷太)ら特命刑事は自殺の背後にある原因究明に乗り出し、捜査線上に浮かんだ川辺をマーク。しかし実は、同じ警備会社の同僚の中尾も川辺の素行に気づいており、今度は中尾が川辺を恐喝、事件は思わぬ方向へ・・・。


小林夕岐子さんの登場場面

小林夕岐子さんは、冒頭に登場する本州製鉄社長令嬢・犬養友子役です。

スーパー「ゴールデンライオン」から大きな買い物袋を抱えて出てくる犬養友子。格子模様の白いブラウス姿で、いかにも気高いお嬢さんという気品が感じられます。ふと、「ちょっと事務室までおいでください」と、警備員の川辺から呼び止められる友子。「え?」と振り返る彼女をカメラが斜めに捉え、きょとんとした表情が印象的。

事務室で川辺から詰問される友子。彼女のバッグの中から、彼女が買った覚えのない商品が出てきます。

「本当に知らないんです!」

必死に訴える友子ですが、確信犯の川辺は聞き入れません。「じゃあ、出るところへ出て頂きましょうか」と、弱みに付け込んで脅します。

「それだけは・・・」

「じゃあ、どうするんです」と川辺に迫られる友子。社長令嬢、かつ結婚を控えているという立場上、身に覚えのないことでも、警察沙汰となればスキャンダルになってしまう。彼女は苦渋の選択をします。

「お金で済むことなら・・・!」

その夜、川辺は旅館の一室に友子を呼び出します。友子は今度は白いコート姿。川辺と対面すると、何も言わずにバッグから札束を取り出し、表情一つ変えずにポツリと言います。

「30万円あります。これで・・・」

札束を手渡す彼女の手のアップが映りますが、しなやかな指がとってもキレイ。真っ赤なマニキュアはちょっと強烈ですが(「ウルトラセブン」のアンドロイド少女のときもそうでした)。しかし、これでおとなしく手を引く川辺ではありません。「すべて終ると思っているんですか」。友子は

「私・・・私結婚するんです・・・」

と打ち明けますが、川辺は彼女が本州製鉄社長令嬢であることも、婚約中であることも知っていて、目を付けていたのでした。それを知った友子はきっぱりと答えます。

「これだけは言っておきます。私、万引きした覚えはありません」

そして、

「私の持っているお金はこれで最後です。ですから・・・」

と懇願する友子ですが、川辺は卑劣にも「あんたが無くても本州製鉄がバックにある。それに、金が無ければ他に方法があるはずだ・・・」と、突然彼女に襲いかかります。逃げようとドアに駆け寄る友子ですが、ドアは鍵がかかっていて開かない。追いつめられ、恐怖におののく友子の表情がアップになり、ここからオープニングクレジットが被さります。友子と川辺の顔のアップが交互に映りますが、暗闇の中に浮かび上がる友子の悲痛な表情がとても印象的。はじめは恐怖に震えながらも必死に抵抗しますが、次第にそれもできなくなり、やがて絶望とも諦めともつかぬ生気のない表情となります。見ているこちらも胸が締め付けられるようです。

オープニングクレジットが終っても、しばらく彼女の表情のアップが映ります。表情は微動だにしません。魂の抜け殻のようになってしまった悲劇のヒロインがこの直後どんな目に遭うのか、見るのも辛い展開になるのは自明ですが、そこは「ご家族みんなで楽しめる東宝映画」、次のカットでは既に友子が夜の街をとぼとぼ歩くシーンに切り替わります。

このシーンの友子は目に大きなくまを作り、髪も乱れ、コートも袖を通さずに引っかけているだけ、とやつれ切った痛々しい姿。ふと、陸橋の下を走る電車に目をやり、思わず背を向けてしまいます。このときパサッとコートが落ちますが、そんなことに構う余裕などありません。今にも泣き出しそうな表情で電車を見下ろし、忌まわしい記憶を振り払うように、しかし奪われた結婚の幸せに大きな未練を残しながら、彼女は自らの命を絶ってしまいます。


なんだか、これでストーリーは終ってしまうみたいですが、ここまで冒頭の約5分ほどです。最初のインパクトが強すぎますが、その後のストーリーも、人間だれでも持っている弱点を巧みに利用した卑怯な犯罪を克明に描き、見ごたえがありました。

なお、マスコミ研究所の木村所長(清水将夫)と椎名部長刑事(宮口精二)が、犬養友子の自殺を報じる新聞を見ながら話し合っているシーンで、彼女のスナップ写真(白黒)が登場します。こちらはとても明るい表情で、ちょっと救われた気分です。



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