東京バイパス指令

41話「殺人海流」

本編ストーリー 小林夕岐子さん出演場面の解説 予告編

現代の犯罪は、不気味なほど凶悪で非情である。このドラマは、身分を隠し、犯罪捜査に拳銃も手錠も持たず、命を懸け、敢然と難事件に挑戦するベテラン特命刑事たちの勇気と冒険の物語である。 (後期オープニングナレーションより)


3回目の『東京バイパス指令』ゲスト出演です。5話、27話と回を追うごとに出番も多くなり、スター順位も上がっています。ちなみに今回は、夏木陽介→竜雷太→藤木悠・柴田光彦→永井譲滋・小林夕岐子・新井茂子、という順番でクレジットされていました。永井譲滋さんまではレギュラーですから、ゲスト出演者としてはスター順位は1位ということです。『旗本退屈男』も同様です。

今回小林夕岐子さんが演じるのは、キャバレーの女・岩城緑。思いがけず闇の世界と関わりが出来てしまい、そこのボスに囲われるような境遇に陥って、覚醒剤漬けにされた挙句に最後は殺されてしまいます。彼女の兄は組織に散々利用されて罪を着せられた末に帰らぬ人となってしまい、彼女は復讐を誓いますが、一方で覚醒剤を得るために組織と手を切れない・・・。5話、27話以上に凄絶な運命を辿る女性を演じています。

本作では、軽くパーマがかかったショートカット姿。予告編での姿を見た時、『コント55号 人類の大弱点』での事務員役が頭に浮かびました(この作品でも同じ髪型)。


本編ストーリー

マグロ漁船・彩雲丸の爆破事件の犯人として服役中の元漁師・岩城松男は、同じく服役中の高松という男に脱獄を唆される。服役者の乱闘騒ぎに乗じて刑務所を抜け出す岩城だが、警官に追われて逃走する途中、何者かに拳銃で撃たれ、瀕死の状態でかつての漁師仲間の所へ帰って来た。高松が「神戸の鮫」の名前を出したこと、3年前の彩雲丸事件をもう一度洗い直してくれ、という言葉を残して、岩城は息を引き取る。

「神戸の鮫」は、かつて麻薬の密輸で鳴らした関西の黒幕。だが、最近はピタリとその噂が流れなくなっていた。特命刑事たちは、岩城の死と彩雲丸事件、そして「神戸の鮫」との関連を探るべく、岩城の住んでいた漁港町に潜入する。

岩城が彩雲丸事件の罪を一人で被って服役していたのは、もっと大きな犯罪の存在を隠蔽する目的だったのではないか。高松を刑務所入りさせて岩城を唆し脱獄させたのも、岩城を体よく消してしまうための芝居だったのではないか。表向き対立する漁港の二大勢力と、全てを陰で操っていると目される「神戸の鮫」との関係は・・・。


小林夕岐子さん出演場面の解説

小林夕岐子さんは、キャバレー「タイガー」のシーンでは、いかにもお水系のけばけばしい衣装で登場しますが、それ以外のシーンでは随分ラフな格好をしています。後者では、とても薬漬けになっているとは思えないほど素朴な普通のOLといった感じ。ボーイッシュなヘアスタイルということもあって、今回はどちらかというと小林夕岐子さんの美貌を前面に押し出してのキャスティングではないようです。



彩雲丸の乗組員たちと対立関係にあるキャバレー「タイガー」を探るため、高松の舎弟に成りすまして社長の三村(武藤英司)に接近する南郷(夏木陽介)。店内に入ってボーイに取り次ぎを頼み、近くのテーブルにいた岩城緑(小林夕岐子)に目を留めます。彼女に「踊ってくれるかい?」と声をかけると、緑は何も言わずに立ち上がって、南郷と踊りますが、まもなく三村自身が南郷の傍へやって来ます。三村に事務室へ案内される南郷。ぽつんと残される緑ですが、表情一つ変えません。

緑は、黒地に赤の水玉模様が入った半袖ワンピース姿。袖口とスカートの裾にはフリルがついています。スカート丈はかなり短いのですが、『決戦!南海の大怪獣』のサキの衣装ほどではありません(当然)。

さて、事務室で南郷はうまく三村に取り入り、しばらく店に置いてもらえることになります。三村が合図すると、ブランデーを持った部下の男と一緒に緑が部屋に入ってきます。何だか面倒臭そうな表情で南郷の方に歩み寄り、隣に座って

「緑です。どうぞよろしく」

と、営業用スマイルで声をかけます。南郷が「あんたの兄さん、岩城って言うんだろ?」と尋ねると、緑はちょっと視線を逸らし、

「どうしてそれを知ってるの?」

と、ボソッと言いながら、グラスを傾けます。彼女の腕には、沢山の注射針の跡が。それに気付いた南郷が、「だいぶヤクを打ってるな。大事にしなよ、体は一つっきゃないんだ」と知った風な口で同情を掛けます。南郷は頻りに自分が刑務所帰りであることを強調しますが、緑は一人でグラスを空けながら、

「あんたって、この世界にいるような人じゃないわ!」

とズバリ言い当てます。一瞬ギクッとしながらも、「買い被ってもらっちゃ困るぜ」と強がってみせる南郷でした。



兄・岩城松男の遺骨が緑のアパートに帰ってきた日。岩城の妻であった志津(新井茂子)が、緑の部屋を訪ねてきます。このアパートでの緑と志津の問答シーンはとても見ごたえがあるので、ちょっと長くなりますが、以下、両者のセリフを再録します。水色が緑のセリフです。

緑は部屋の窓際に座っており、志津には背を向けています。照明の加減で顔の下半分が陰になり、さながら「血を吸う人形」状態(こういう絵が実によく似合ってしまう・・・)。緑は志津に背を向けたまま、冷ややかに言います。

「・・・よく来られたわね。今更この部屋に、一体何の用事?」

顔の下半分が陰になったまま表情がアップになり(恐い・・・)、彼女は皮肉っぽく続けます。

「安心したでしょう、兄さんがこんな姿になって帰って来たんだから・・・」

そして、彼女はやおら立ち上がって志津の方を振り返り、今度は強い口調になります。

「何とか言ったらどうなの!

志津も立ち上がって、重い口を開きます。

「・・・・緑ちゃん、あんただって女なら分かるでしょう」

「何がよ!」

「女にとって、愛してもいない夫を6年も待っているって、どんなことだか・・・」

「何ですって!」

「岩城は暴力で私を妻にした。私は自分の意志であの人の所へ行ったんじゃないわ」

「・・・あんた、そんな言い訳に来たの!?」

「とんでもない。ただ、私には私の生活がある、ってことなのよ・・・」

緑は、兄の遺骨の入った骨箱を手に取って、志津の目の前に置きます。

「志津さん、これを見て。兄さん、一体誰のためにこうなったと思う?なぜ一人で罪を背負って、刑務所なんかに行ったと思う!?」

「私のためだって言いたいの?」

「そうよ、何年でも待ってるって約束したのはあんたじゃない!だから兄さん、あんたの父さんの平蔵さんや源吉船長のためを思って・・・」


それまで平静を装っていた志津の顔が、一瞬こわばります。

「緑ちゃん、そのことだけは・・・!」

「言ったら殺されるって言うの、結局兄さんのように。えッ、志津さん!」

緑に睨み付けられ、何も言い返せない志津。

「・・・でも志津さん、あたし、兄さんの敵を討ってやるわよ。どんなことをしたって」

それを聞いて、今度は志津が反撃に出ます。

「緑ちゃん、あんたにそれが本当にできるの?・・・できるの!?・・・できたらお慰みだわ。兄さんの敵を討つどころか、自分の体に打つものも打てなくなるわよ・・・。あたしはそれを言いに来てあげたの。短気を起こさないようにってね」

志津は言葉巧みに緑の痛い所を突いてきますが、緑は怯むことなく切り返します。

「そうすれば、あんたも安心して抱かれていられる・・・何よ、雌犬ッ!」

流石にそれを聞いて激高した志津は、バチーン!と緑にビンタを浴びせます。ぶたれた左の頬を押さえながら、キッと志津を睨み返し、やがて意を決したように口を開く緑。

「・・・やるわ、必ず仕返ししてやる!」


・・・いやー、小林夕岐子さんの口から「雌犬」なんて言葉が飛び出すとは・・・(汗)。でも、聞いた限りでは自身もちょっと躊躇いがあったような、ちょっと無理している感じに見えました。どう考えても小林夕岐子さんのイメージにはミスマッチ。ちなみに、このシーンでは大きな衿のついた水色の半袖シャツにパンツ姿。先のキャバレーのシーンとは打って変わって、実に地味で庶民的です。



海の見える丘に建てられている、彩雲丸乗組員たちの墓。納骨に来た南郷と緑が佇んでいます。緑は今度は白い半袖シャツにジーンズ(らしい)姿。非常に細い脚の線が印象的です。白い墓標を見つめながら、緑が寂しそうに呟きます。

「兄さんも、とうとうお仲間入りになっちゃったわ・・・」

高松の舎弟に成りすましている南郷が、「俺が出所する2、3日前だったな、お前さんの兄貴が脱獄したのは」と声をかけると、緑は、

「兄さん、高松に唆されたの」

と、ボソッと言います。緑は事の真相に気付いているらしい。

「そして、逃げる途中で撃たれたんだわ。・・・誰かに」


「誰かって誰だい?」と南郷が尋ねると、緑はそれには答えずに、海の方を見つめて、南郷に背を向けます。「高松の兄貴はあの時、俺と一緒にムショに残ってたんだ。誰かが高松の兄貴と連絡をし合って・・・。緑くん、・・・」と南郷が言いかけたところで、緑が急に南郷の方を振り返ります。

「誰!?・・・あんた一体誰なの!?」

「だから俺はムショで・・・」言い訳する南郷。

「嘘・・・嘘だわ・・・!」

それだけ言うと、緑は南郷を残してその場から走り去ってしまいます。兄を殺した人物が他にいるとしても、脱獄を唆した高松もある意味では敵であり、その舎弟分も同じ。にも関わらず自分に接近してくる南郷の正体を、緑は訝しく思っていました。復讐すべき本当の敵は誰なのか・・・。



高松の舎弟に成りすましていた南郷も、とうとう三村社長にその正体がバレてしまい、「タイガー」の地下室に監禁されてしまいます。そこには他でもない、出所した高松も放り込まれていました。高松は三村に雇われて、刑務所にいる岩城に脱獄を唆すため、自ら罪をでっち上げて服役していたが、その見返りに法外な要求をしたため、三村に裏切られたのでした。高松は真相を南郷に語ると息を引き取ります。地下室はガス室になっており、南郷は絶体絶命。

その階上の事務室。見張り役をしている三村の部下の男が椅子にふんぞり返って座っています。そこへフラフラと入って来る緑。目は虚ろで、見るからに薬の禁断症状。

「お願い、一本だけ・・・」

かなりアブナイ表情で、薬をせがむ緑。「俺の言うことを聞くかい?」という男の言葉に、一瞬うつむいてしまう緑ですが、背に腹は代えられず、無言で頷きます。その目はギラギラと光り、額には脂汗がたらたら。大熱演です。

スピーカーを通して、地下室にいる南郷の耳に、部下の男の声が聞こえてきます。「お前もヤクが切れると****(←音声カット。放送禁止用語)だな・・・・たっぷり可愛がってやる」。しかし、そこはやはり「御家族そろって楽しめる東宝映画」なので、次のシーンでは、既に事を終えて?ソファーにぐったりしている部下の男と緑の姿が映るのでした。とは言えこのシーン、緑の艶めかしく重ねた美脚がアップになり、刺激が強いです。

やがて緑はむくっと起き出し、衣服を直して、男がまだ眠っているのを確かめながら、テーブルの上に置いてある地下室の鍵に手を伸ばします。暗闇の中で、びくびくしながら鍵を手にする緑。

大急ぎで階段を降り、地下室へ向かいます。地下室の鍵を開けた瞬間、緑の顔が苦悶に歪みます。その背中には、見張りの男が投げたナイフが突き刺さっていました。地下室から出てきた南郷の反撃で男は退散しますが、緑は南郷の腕の中にぐったりと倒れます。

「神戸の鮫というのは・・・」

息も絶え絶えの緑。

「兄さんの・・・兄さんの敵を討って・・・」

それだけ言うと、緑は息を引き取ります。身分を偽って接近してきた南郷に当初は不信感を抱いていた緑でしたが、彼が高松もろとも三村に監禁されたことから、その正体は分からないが、自分の味方になってくれる人物と信じ、命懸けで救い出した・・・のだと想像しましたが、緑について劇中でそこまで語られていないので、よく分かりません。そういう意味では、やや唐突な展開だったような気がします。

ちなみに、階段から降りて来た所を、ナイフで背中を刺されて絶命するという結末は、27話「女獣」とほとんど同じ。スタッフも狙っていたのでしょうか?


予告編

最後に、本作の予告編ナレーションを紹介します。オープニングナレーションは納谷悟朗氏ですが、予告編は今までどおり中江真司氏です。

密輸と殺しに明け暮れる小さな漁港。そこでは、怪人物・神戸の鮫が夜となく昼となく現れては姿を消してゆく。果たして神戸の鮫とは何者か。潜入した特命刑事も、鮫の罠にかかった。次々に鮮血を求めて、貪欲な鮫は海へと出てゆく。次週東京バイパス指令「殺人海流」にご期待下さい。




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