太陽にほえろ!

32話「ボスを殺しに来た女」

脚本/鎌田敏夫
監督/澤田幸弘

ストーリー 小林夕岐子さん出演場面の解説 予告編

1999年9月より、ファミリー劇場で「太陽にほえろ!」マカロニ編がスタートし、2年間待った甲斐があった・・・と感動していたのですが、なんと時を同じくして私の地元のテレビ愛知で「太陽」マカロニ編がスタートしました。後者は月〜金のベルト放送なので、ファミリー劇場よりも一足早く小林夕岐子さん出演の#32を見ることができました。

小林夕岐子さんのスター順位は、ゲスト出演者中、佐藤慶さんに次いで2位。サブタイトル通りの「ボスを殺しに来た女」を演じたわけですから、ある意味このエピソードの主役です。しかし、予告編を見たときからイヤな予感はしていたのですが、・・・やはり途中で死んでしまう役でした(涙)。


ストーリー

七曲署に、捜査第一係長の藤堂(石原裕次郎)を訪ねて来た若い女(小林夕岐子)。女は藤堂に向けて拳銃を発射しようとしたが、弾が出ず、逃げる途中、非常口から転落して重傷を負った。しばらくして捜査第一係に男の声で、女の安否を問う電話がかかってくる。だが男は自分のことは名乗らなかった。

藤堂が狙われたという知らせを受けて、本庁の石田刑事(佐藤慶)が七曲署にやって来た。石田は藤堂の元同僚で、藤堂の着任前に七曲署の捜査第一係長をしていた。今回の事件は警察に対する重大犯罪だとして、石田は半ば強引に自ら捜査に乗り出す。

女の持っていた拳銃は、最近ある暴力団の手入れで大量に押収した密造拳銃と同じ物と分かった。その摘発漏れの一丁が、組の若い者を通じて女の手に渡ったのである。女はその拳銃を百万円で買ったという。拳銃を売った男の話から、女はキャバレー「不夜城」のホステスで、源氏名は「圭子」と分かる。

女のアパートには「明夫ちゃん  やっとあなたのところへ行けます」という遺書が残されていた。すると、女の恋人らしいその明夫という男も既にこの世にいないことになる。女は百万円もの大金を使って拳銃を手に入れ、死ぬ覚悟で捜査第一係長を殺しに来たのだ。しかし一体何のために?

女が収容されている病室。石田と本庁の刑事たち、それにマカロニこと早見(萩原健一)が詰めている。ふと早見が窓を開けると、キラッと何かが光った。狙撃されている!間一髪、身を伏せる一同。銃弾はベッドのリンゲルを貫いた。早見が飛び出し、撃った犯人を追いかけるが、取り逃がしてしまった。

藤堂は石田に会い、女の遺書にあった明夫という男のことを尋ねる。この坂口明夫という男は、1年前に城東銀行を襲撃し、逃走中に踏切で電車にはねられて死亡していたのだが、当時捜査第一係長だった石田はその事件の捜査主任をしていた。石田は2年前にも別の事件の共犯容疑で坂口明夫を取り調べたことがあり、その時は証拠不十分で釈放したのだが、以来ずっと彼をマークしていた。そして1年後、坂口明夫は本当に銀行強盗をやってしまったのである。クズみたいな奴さ、と石田は吐き捨てるように言った。藤堂は、狙撃の的は女ではなくて石田だったのではないかと推測するが、石田は「恨みを買うことを怖がってちゃ刑事は務まらんよ」と一笑に付した。

再び病室で女を尋問する石田。女は、明夫が「七曲署の捜査第一係長をいつか殺してやる」と言うのを聞いていたという。彼女によると、明夫は2年前、何もしていないのに執拗な取り調べを受け、ある時、堪えかねて係長の顔に唾を引っかけ、殴られた事があった。それ以来、その係長にずっと付きまとわれていたという。だが女は、彼女の拳銃から弾を抜き、そしてライフルで石田を狙撃した「もう一人の男」については、「あの人は関係ない」と言った。

キャバレー「不夜城」のホステスたちからの情報で、店の呼び込みの寺本(井上博一)という男が女に片思いをしていたことが分かった。この男が「もう一人の男」と睨み、石塚(竜雷太)と島(小野寺昭)が彼をマークする。

病院に、また女の安否を問う電話がかかってきた。島からの報告で、寺本が電話ボックスで電話をかけた時間と、病院にかかってきた電話の時間が一致した。だがこれだけでは証拠にならない。そこで石田は女の声の録音テープを編集し、「会いに来て」という声を作る。電話でこれを寺本に聞かせ、彼が病室にやって来たところを挙げようというわけだ。ちょうど看護婦から、女が自分でリンゲルを外して死亡したという知らせが入るが、石田は構わず看護婦に命じて、電話をかけさせる。しかし寺本も、病院に警察が待ち構えているであろうことは感づいていた。彼はジャンパーの袖口にナイフを忍ばせて店を出た。

女の病室にやって来た寺本。ベッドに寝ている女の顔には白布がかけられている。寺本が白布を上げ、彼女の最期の姿を確認したところで、刑事たちが部屋に入り、彼を逮捕した。

寺本を連行する本庁の刑事たち。だがその途中、突然、寺本が隠し持っていたナイフで石田に切り付けたため、早見は反射的に寺本を撃ってしまう。

「どうしてこんなことをしたんだ。女は関係ないって言ってたぞ」藤堂の問いかけに、寺本は何も答えず、そのまま息を引き取った。藤堂は、駆けつけた医師や看護婦に、寺本の遺体を女の部屋に運ぶよう命じた。

事件は終わったが、石田の非情な捜査に、とうとう早見の怒りが爆発、石田を殴ってしまった。石田も彼に命を助けられたとあって、今回は不問とされたが、こんな刑事を部下に持った藤堂の出世の道はなかなか遠そうだ。(完)


小林夕岐子さん出演場面の解説

本作では「東京バイパス指令」5話と同様、小林夕岐子さんは冒頭でいきなり「ダイブ」してしまうため、それ以降の出演シーンはほとんど病院のベッドの上、しかも顔を包帯でぐるぐる巻きにされた痛々しい姿です。


1
捜査第一係の事務室。早見が仲間の前で、カード手品を披露しています。そんな所へ、ドアを開けて若い女(小林夕岐子)が入って来ます。 女はオレンジ系のエスニック模様(?)のパンツルックの上から、黒いコートを羽織っています。コートは、縁と袖口に大きな白いボアが付いています(サンタクロースみたい)。女の顔は確かに美しいのですが、どうも冴えない表情です。

「あの・・・捜査第一係ってこちらでしょうか?」

伸子(関根恵子)がちょっと怪訝そうに「ええ」と応対します。

「・・・係長さんにお目にかかりたいんですけど」

それを聞いて早見が、「面会ですよ、ボス」と藤堂に声をかけます。

「藤堂です。何か」

「お話があるんです」

女は能面のような表情のまま話します。藤堂は手前にある応接机をすすめますが、女が

「あの・・・係長さんだけに。二人きりで」

と言うので、藤堂は別室に彼女を案内します。

さて別室。藤堂は「どうぞ」と女に椅子を勧めます。机を挟んで向かい合う二人。女は何も言わず、じっと藤堂を見据えています。何か緊張したような表情。すると突然「パチッ」という音がその場に響きます。その瞬間、うろたえる女の顔。「パチッ、パチッ」何度も同じ音が響きます。実は女が机の下から拳銃の引き金を引いていたのですが、弾丸が出ません。それに気付いた女は慌ててその場から逃げ出します。

「捕まえろ!」藤堂の声を聞いて、早見たちが女を追います。女は階段を駆け上がり、突き当たりの非常口へ向って走っていきますがその先は・・・「そこは駄目だ、駄目だ・・・!」早見の叫びもむなしく、女は非常口の扉を開けた瞬間、地面に真っ逆さまに転落します。

「きゃあぁぁぁぁー!!」

次のカット、頭から血を流して倒れている女。救急車で病院に運ばれます。またしても冒頭で小林夕岐子さんは死んでしまうのか・・・と不安になりますが、幸い、まだ出番は続きます。



女の使った拳銃の入手ルートに関して、山村(露口茂)と石塚(竜雷太)が青龍会組長を詰問するレストランでのシーン。山村は組長に「この女に見覚えはないか」と言って女の飛び降り直後の写真を見せます。いくら美人と言っても、血まみれの姿は食事中にはちょっと・・・。



女のアパートのシーン。「明夫ちゃんやっとあなたのところへ行けます」という遺書の隣に、明夫と女のツーショット写真が飾ってあります。この写真の小林夕岐子さんはちょっと地味なスタイルです。



女が収容されている病院。まだ女の意識は朦朧としており、 「・・・あぁ・・・あぁ・・・」 と声を発するのが精一杯。声だけ聞くとちょっとドキドキしてしまいます。



キャバレー「不夜城」で島と早見がホステスたちに話を聞いているシーン。寺本が圭子という例の女に随分親切にしていたという話が出ます。ホステスの回想シーンで、雨の中、女の靴の踵を直してやる寺本が映ります。白いコート姿の女は傘をさして片足で立っています。一方、寺本はずぶぬれです。



病室。ようやく意識を取り戻した女を石田が尋問するシーン。カメラは左上方から、うつろな目で天井を見つめたまま言葉を絞り出す女の顔を捉えます。包帯でぐるぐる巻きにされていても息を呑むほど美しい小林夕岐子さんの顔と、藤堂、石田、早見の三者三様の表情が、やり取りの間、交互に写ります。本作のヤマ場であり、かつ小林夕岐子さんの独壇場です。彼女を中心に、密度の濃い時間が流れます。

石田「誰を狙ったんだ」

「・・・七曲署の・・・係長さん」

「名前は」

「分からない・・・」

「分からない?名前も分からない男を殺そうとしたのか」

「七曲署の捜査第一係長・・・・明夫さんそう言ってたもの・・・・いつか・・・きっと殺してやるって・・・死ぬときもそればっかり言ってた・・・」

藤堂「どうしてそんなに恨んでいたんだ」

「・・・何にもしないのに、捕まえられて・・・それからもつきまとわれて・・・真面目に働いてても・・・すぐ駄目になって・・・・とうとう・・・・本当に銀行強盗をやってしまったの・・・」

藤堂「共犯の疑いがあったから仕方がなかったんだ」

「違うわ・・・取り調べの時に・・・ひどいこと言われて・・・明夫ちゃん・・・唾を引っかけたのよ・・・係長さんの顔に・・・そしたら・・・お前のようなクズは・・・立ち直れないようにしてやるって・・・殴られて・・・それからもつきまとわれて・・・」

石田「もう一人の男は誰なんだ」

「もう一人?」

藤堂「君の拳銃から弾を抜いた男だ。君を殺人犯にさせまいとした男だよ」

石田「俺をライフルで狙った男だ!」

「あの人は・・・関係ないのに・・・関係ないのに・・・」

石田「誰なんだその男は!誰なんだ!」

次第に女の息が絶え絶えになってきます。見かねた看護婦が「もうおやめになって下さい!」と石田を制止しますが、石田は「もう少しだ!」と言って聞き入れません。

石田「一つだけ言っておいてやろう。坂口明夫が憎んでいた捜査第一係長ってのは・・・俺だよ」

ハッと石田の方を向き直る女。声こそ出ないものの、女の表情には衝撃が走っています。このカットだけ照明がやや抑えられており、あたかも「血を吸う人形」のようです。恐い・・・・

石田「お前は違う人間を殺そうとしたんだ。惚れた男の復讐だなんてつまらんことを考えるからこんなことになるんだ。つまらんことのために綺麗な顔を台無しにしたな」

女を見下ろす石田の憎々しい表情。流石に藤堂も「石田さん!」と口を挟み、そして堪らず石田に手を出そうとする早見を制止します。 女の目から涙が伝わり落ちます。・・・・ううう・・・・(T‐T)・・・ 見ているこちらも思わずもらい泣きしてしまう、辛く哀しい場面です。



先にも紹介したように、本編後半にさしかかったところで、女は自らリンゲルを外して死んでしまいますが、終盤、寺本が女の病室にやってきて彼女の死に顔を見るシーンで、雨の夜の場面が一瞬挿入されます(白いコート姿)。このカットは、メイクもそれらしく変えているのが流石です。 小林夕岐子さんの出番はここまでですが、最後に一応、寺本の名誉のために、彼の最後の独白を紹介しておきます。

「俺は、止めたんだ。死んでしまった男のことなんか忘れろって言ったんだ。でもこの女は忘れなかった。一度拳銃を手に入れたのを知って、俺は女に分からないようにそれを隠した。でも女はまた拳銃を手に入れたんだ。貯めていた金を全てはたいて。俺は、女がどうしてもやる気なのを知って、女には黙って拳銃の弾を抜いた。それしかなかったんだ。俺は、女を人殺しにだけはしたくなかった・・・」

「・・・捜査第一係長が代わってたことを俺は知ってたが、女には教えなかった。俺は女を捕まえてほしかったんだ。死んでしまった男のことなんか忘れさせて、もっとまともな幸せな人生を送らせてやりたかった・・・」


結局彼は、女には何とも思われていなかったわけですが、それを知っても何も言わずに一人で死んでいきます。女の幸せを陰から支えたいという、ただそれだけのために、人殺しまで買って出ようとした男。その後の、「(寺本の遺体を)女の部屋に運んでやれ」という藤堂のセリフと相俟って、とても印象に残る場面です。


予告編

バップより発売中の「七曲署ヒストリー オープニングタイトル&全予告編コレクションvol.1」(ビデオ・LDとも有り)に予告編が収録されていますので、ナレーションを紹介します。

間違えてボスを狙った女。かつて愛した男を罪のどん底に陥れた冷酷刑事長への復讐。そしてもう一人、密かに女をかばう影の男。女が本当に殺そうとした本庁勤めのボスの同僚。その非情な捜査に、ついにマカロニの怒りが爆発する。次回「ボスを殺しに来た女」、どうぞご期待下さい。

予告編で小林夕岐子さんの姿が映るのは3カット。まず冒頭、顔に包帯をぐるぐる巻きにして病院のベッドに寝ている彼女のアップ。同じくベッドに寝ている姿。そして、悲痛な表情で非常口から転落するシーンです(本編とは少し構図が違うように見えます)。




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