人形佐七捕物帳

11話「怪談 捕物三つ巴」

ストーリー 小林夕岐子さん出演場面の解説 予告編・新聞テレビ欄

この作品は「新・テレビ探偵団」というHPの掲示板を通じて教えてもらったのですが、丁度タイミングよくその月からファミリー劇場で放送が開始されました。

本作の小林夕岐子さんはなんと一人三役。日清混血の美人太夫で南京手妻師の三姉妹・松鶴(しょうかく)・竹翠(ちくすい)・梅鶯(ばいよう)を一人で演じています。チャイナ服あり、二本差しの若衆姿ありと、かなり特異なキャラクターとなりました。スター順位としては東千代之介氏に次ぐメインゲスト扱いです。


ストーリー

江戸で公演中の南京手妻の一座。松鶴と竹翠の姉妹は、そこの看板美人太夫であったが、ある夜、大川端で松鶴が死体となって発見され、竹翠の方は忽然と姿を消した。

松鶴殺しについては全く手がかりも無く、江戸町奉行所による下手人の捜索は遅々として進まなかった。そんな折、長崎奉行配下の鵜飼高麗十郎(東千代之介)という男が、捕物比べをしたいと江戸町奉行所に申し出てきた。鵜飼は、自分にはオランダ仕込みの理に適った捕物術がある、と佐七に大見得を切ってみせる。

鵜飼は竹翠の行方を易々と付きとめる。鵜飼は一座の楽屋にあった松鶴の替え玉人形に目をつけ、人形の入っていた二重底の箱が怪しいと睨み、事実そこから竹翠の死体が出てきたのである。

いきなり出鼻をくじかれた佐七(林与一)だが、お粂(光本幸子)の内助の功もあり、松鶴・竹翠の妹である梅鶯と接触することができた。梅鶯の話から、彼女たち姉妹には亡くなった父親の莫大な遺産があることがわかる。その遺産を横取りしようとする他の血縁者が三人姉妹を皆殺しにしようとしているらしい。

松鶴、その死体を運んでいた中間・宅助(二見忠男)、そして竹翠のそれぞれの死体は、全て特殊な鎖状のもので首を絞められていた。これで佐七には下手人の目星がついた。そして最後に狙われる梅鶯を、あえて楽屋に一人で寝かせ、下手人が姿を見せるのを待つことにする。果たしてその夜、梅鶯に手をかけようとしたその下手人の意外な正体は・・・。


小林夕岐子さん出演場面の解説


怪しげな中国人が呼び込みをしている南京手妻の一座。「日清混血美人 松鶴太夫・竹翠太夫」というのぼりが立っています。さて舞台ですが、画面を見て驚きました。小林夕岐子さんが二人いる!大きな扇子をひらひらさせながら、白いチャイナ服姿の全く同じ顔をした美人が、微笑みながら現れます。もちろん合成でしょうが、画面を見ても簡単に合成とは分かりません。本当に双子の姉妹が出演しているかのようです。

さて出し物は「ギロチン斬り」。画面向かって右側の小林夕岐子さん(=松鶴。左のほっぺたにホクロがあります)がご挨拶します。それまでの小林夕岐子さんの役柄からは想像もつかない、「いかにも中国人」的なわざとらしい?台詞回しが何とも微笑ましいです。
「では只今より〜、皆様お待ち兼ねの南蛮渡来の大からくり、ギロチン斬りをあい始めまする。かく申す松鶴が、この種も仕掛もない箱に入り、蓋を閉ずるところを竹翠、月花の両名が、南蛮渡来のギロチンをもちましてこの体を真っ二つ!・・・・さて、松鶴めが無事にギロチンを抜けましたなれば、拍手ご喝采〜。では〜 !」
活字ではイメージがうまく伝わりませんが、とにかくこの台詞回しは一度聞いたら耳から離れません。遅効性の薬みたいにじわじわと頭に染み込んでゆきます。

で、箱に入る松鶴ですが、横になるときに、どうやら頭をゴツンと箱にぶつけたようです(音が聞こえる)。蓋が閉じられ、竹翠と月花(佐代雅美)がギロチンを用意し、観客がシーンと静まりかえったところでギロチンが落ち、箱は真っ二つ。そして箱からは真っ赤な鮮血が!失敗か!? ざわめき立つ観客たち。・・・ところがその箱から出てきたのは、松鶴の替え玉人形でした。その時、舞台の後ろからひょっこりと松鶴が現れ、ぺこりとお辞儀をして観客にご挨拶します。

「皆様これぞギロチン斬りの芸当〜!」

このセリフも一度聞いたら耳から離れません・・・。



毎度のことながら、女房お粂(光本幸子)の留守中に芸者と差し向かいで酒盛りしている佐七(林与一)。それを発見したお粂は怒り心頭、大川端で身を投げてやる、と言って家を飛び出してしまいます。

夜の大川端、お粂は、南京手妻の箱を運んでいる怪しい中間の男・宅助(二見忠男)を目撃。お粂は中身は何かと問い詰めますが、宅助はそれには答えず、逆にお粂の首を締めにかかります。お粂危うし!その時、

「待て!」

と鋭い声が響きます。お粂と宅助が振り返ると、そこには、頭巾をした二本差しの若衆が。しかし、その美しい顔は明らかに女性、しかも松鶴・竹翠に瓜二つでした。思わぬ横やりに退散する宅助。若衆は、宅助が残していった手妻の箱を開けようとしますが、お粂が声をかけると、そのまま闇の中へ走り去ります。お粂が箱を開けると、中には何と松鶴の死体が・・・。

先の場面でチャイナ服で登場したと思ったら、今度は若衆姿。この唐突な展開には少し驚きました。一体何の伏線なのか?それにしても、小林夕岐子さんの「男役」はとても新鮮でした。美剣士です!

ちなみに、松鶴の死体の入った箱を運んでいた中間・宅助役の二見忠男は、映画『血を吸う人形』でも、亡くなった野々村夕子(小林夕岐子)の死体を箱に入れて埋葬することを請け負っていました。こんなにシチュエーションが似ているというのも珍しいです。当時のスタッフも、やっぱり狙っていたんでしょうか?



佐七と鵜飼の捕物比べ第一ラウンド、楽屋での張り込み。双方とも、松鶴を殺めた下手人は必ずこの現場に戻ってくるであろうと読んだからです。

鵜飼によると、事件の起こる数日前、この小屋に松鶴・竹翠を訪ねてきた若衆姿のやさ男があり、その男は二人の姉妹に会って何やらひそひそ話、それから間もなく起こったのが今度の事件。とすると、怪しいのはまず、佐七たちが昨夜大川端で会ったあの若衆。しかし、仮にその若衆が松鶴を殺したとして、妹の竹翠はどこへ姿をくらましたのか。ふと、鵜飼は松鶴の替え玉人形に目をつけ、その人形の入っている箱の底に刀を突き立てます。すると、刀には血痕が。鵜飼が箱の二重底を開けると、中から竹翠の死体が出てきます。

この場面、まず鵜飼が「佐七、あれを見い!」と言って、松鶴の身代わり人形を示します。このとき、画面には人形ではなく、小林夕岐子さんの本物が写っています。青白い顔をして無表情に突っ立っている姿は、文字通り「血を吸う人形」状態。これは恐すぎ!そのあと、鵜飼が刀を突き立てた箱の底を開けた時、竹翠の死体が手前にすーっと倒れてきますが、これまた「血を吸う人形」状態。死体の演技も本当にお見事です。当時のスタッフも、小林夕岐子さんに対して多分に「血を吸う人形」のイメージを抱いていたのだと思います。



楽屋での張り込み比べで佐七が後れを取ったと知ったお粂は、彼らが張り込んでいる楽屋で、”安養寺の金弥”なる架空の人物と逢い引きに来たかのように振る舞います。張り込みながら、物陰で歯ぎしりする佐七。鵜飼はお粂の作戦に乗せられ、安養寺の金弥なる幻を追いかける羽目に。また、お粂は、大川端で会った、松鶴・竹翠に瓜二つの若衆が落としていった手紙を手がかりに、自らも捕物に乗り出します。そして、その若衆と再会し、その人物は、松鶴・竹翠の妹、梅鶯であることが分かりました。

お粂の真意をまだ知らない佐七。ヤケ酒を飲んでべろべろに酔っ払って家に帰ってくると、玄関に男物の草鞋が脱いである。あの女、畳んで四つにしてやる、と血眼になる佐七ですが、座敷で座っていた若衆は何と、松鶴・竹翠と瓜二つ。「この人は男の身なりこそしているけど、お女中さんで、松鶴竹翠さんの末の妹さん」とお粂から聞かされます。

「梅鶯と申します」

梅鶯は丁寧にお辞儀をします。お粂の持っていた手紙には、「伝通院 君島梅之丞」なる名前が書いてありますが、これは、梅鶯の仮の名前でした。ようやく頭が冷えてきた佐七は、松鶴・竹翠殺しについて何か心当たりはないかと梅鶯に尋ねます。

「はい、一つだけございます」

ここから、梅鶯ら三姉妹の身の上話が始まります。この部分は非常に長く、小林夕岐子さんの独壇場です。

「・・・実は、私たち姉妹三人は長崎で、清国人の父・呉と申す者と、丸山の遊女の間に生まれたのでございます。間もなく父は私たちを捨てて清国に帰り、母は亡くなりました。それからというもの、私たち姉妹三人は南京手妻に身を落とし、散々な苦労をしましたが、つい三月ほど前、私は清国人の郭と申すお方のお屋敷に引き取られたのでございます。そして、ある日・・・」
ここで回想シーンとして、真っ赤なチャイナ服で、腕を前で袖の中に入れているコテコテスタイルの小林夕岐子さんの映像が映ります。いくらなんでもこれはやり過ぎ!今回の小林夕岐子さんは殆ど着せ替え人形状態です。それはともかく、謎の中国人から金の延べ棒?のようなものを受け取り、満面の笑顔で乾杯を交わす小林夕岐子さん。

「・・・何とそのお方は、あちらで死んだ父・呉の莫大な遺産を私たち姉妹に届けに来られたお使いだったのです。 そこで私は、江戸にいる二人の姉に会うため、道中を案じて若衆姿に身を変え、こちらへ上って参りました。そして姉たちに会い、喜び合ったのも束の間、あんな無残な・・・最期を遂げて・・・」
そこまで言うと、さすがに感極まって涙声になってしまいます。今回の殺しには遺産が絡んでいる。そこで佐七は、縁起でもないことを聞くようだが、と断って、梅鶯に万一のことがあった場合、その遺産は誰の手に渡るのかと尋ねます。
「それは死んだ母方の血筋の者とか・・・郭さんもそう申しておりました」

それは一体誰だい?と聞かれますが、

「さあ・・・遠い他国に私たちの叔父に当たるものがいるとか聞きましたが、それが生きているのやら、死んでいるのやら・・・」

佐七は、「ひょっとするとそいつがお前を狙っているのかもしれねえ。三人姉妹を皆殺しにして、遺産をそっくり頂こうって魂胆よ」と推理します。まあ、誰でもすぐ気が付きそうなものですが、梅鶯は

「まあ!」

と大袈裟に驚いてみせます。続いて「それじゃ梅鶯さん、こないだ大川端で松鶴さんの死体詰めの箱と行き会ったというのは一体どういうわけだい?」と佐七に聞かれ、お粂と会った晩の真相を話します。

「はい、あれは、その手紙をご覧の通り、あの晩私は二人の姉に、あのお屋敷まで呼び出されたのでございます。ところがそこは何と空き屋敷。それでも私は恐る恐る忍び込みました」
提灯を手に、屋敷へそろそろと接近する梅鶯の回想シーン。屋敷の中で南京手妻のからくり箱を発見します。佐七「その箱を開けようとしたところ、何者かに襲われたって訳だな?」

「はい。でも、慣れぬ江戸の町のことで、道に迷ってやっと大川端へ出て参りますと、あの中間が、おかみさんを・・・。 それで今夜、もう一度あのお屋敷を検めようと思ったのです」

といった次第で、先ごろ、その屋敷でお粂と梅鶯はバッタリ出会ったのでした。事件の鍵はその屋敷にある。佐七と豆六(高松しげお)・辰五郎(久野四郎)は梅鶯とお粂を連れて屋敷に向かいます。一人だけ忍者のような格好をした小林夕岐子さんはちょっと浮いていました(笑)。屋敷の中で一行は、例の中間・宅助が、松鶴・竹翠と同じ縊り方で殺されているのを発見。佐七はその傷痕から、ピンと来るものがありました。

「俺には分かったぜ。尻尾を出さねえ狸野郎の正体がな…」



松鶴・竹翠の不慮の死により、しばらく休演していた一座でしたが、梅鶯が現れたことで公演を再開します。舞台では梅鶯が「出刃打ち」の妙技を披露しています。壁に張り付いて立っている月花に包丁をズバズバ投げつけ、それらは全て月花の体と紙一重のところに命中します。今回の梅鶯は、まるで「魔法少女ちゅうかなぱいぱい」のような赤いチャイナ服姿。

公演を終えて楽屋に戻ってきた梅鶯に、佐七が「見事だぜ」と声をかけます。

「お恥ずかしゅう存じます・・・」

次に必ず命を狙われる梅鶯を舞台に上げることは佐七の苦肉の罠でした。梅鶯の勇気ある行動に礼を言う佐七ですが、梅鶯は覚悟の上です。

「親分、そのお礼には及びません。亡くなった姉たちの仇を討つためなら、私どんな危険でも厭いません!」

佐七「舞台へ出て今日で三日目、今夜あたりが一番危ねえ・・・。その危ねえのを承知で、今夜は小屋の者を引き取らせ、お前一人、この楽屋で寝てもらうぜ」

「わかりました・・・・!」



一人、暗い楽屋で眠っている梅鶯。「ちゅうかなぱいぱい」の格好をしていても、その寝顔は何とも艶めかしい。佐七の予想通り、彼女を亡き者にしようと、松鶴・竹翠らを殺めた下手人が姿を見せますが、待ち受けていた佐七に取り押さえられます。その下手人の正体こそ・・・。


予告編・新聞テレビ欄

予告編ですが、ナレーター(納谷悟朗)は「次週、人形佐七捕物帳」と言うだけで、特にストーリーを紹介するようなナレーションはありません。梅鶯の出刃打ちシーンが登場しますが、本編で使われていないカットが映るのでこれは貴重です。

また、昭和46年6月19日の新聞各紙のテレビ欄を見てみると、朝日・毎日・日経とも番組欄に小林夕岐子さんの名前が載っています。スター順位は、林与一・光本幸子・東千代之介・小林夕岐子。朝日と毎日にはストーリー紹介記事があります。




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