旗本退屈男
22話「美女を賭ける」

ストーリー紹介 小林夕岐子さん出演場面の解説

脚本・松浦健郎 監督・古川卓巳

キャスト
早乙女主水之介/高橋英樹
おゆう/水野久美
長次/うえずみのる
お咲/小林夕岐子
杉浦権之兵衛/北浦昭義
六松/小瀬朗
辻堂内膳/野口元夫
黒住団七/藤岡重慶
古高新兵衛/島田景二郎
永井伊賀守直敬/増田順司


本作では、小林夕岐子さんはサブタイトルにある「美女」そのものというおいしい役。町一番の器量よしでしかも美人、と言うことなしの「お咲」役です。


ストーリー

香良洲山江戸藩中の薬屋の娘で、殿中へ腰元に行っている美女・お咲。町ですれ違った早乙女主水之介も思わず振り返ってしまうほど。そんな折、香良洲山藩当主・永井伊賀守が、優勝者には腰元・お咲との縁組みを許すという触れ込みで、奉納試合を開催するという知らせが入ってきた。

伊賀守の家臣の一人・黒住団七は、家老の辻堂内膳らと通じて、現在の元禄大平の世の中では自分たちの出世が望めない、何か騒動でも起こってくれなければ困る、と考え、伊賀守の信望厚い若侍・古高新兵衛を亡き者にし、御家騒動を引き起こそうと企んでいた。そこで、新兵衛の中間・六松に賭場で大きな貸しを作っておき、試合で新兵衛の介添えを努める彼に命じて木刀に仕掛を施させる。もちろん、藩中一の美女・お咲を我が物にしようという魂胆もあった。

果たして試合の当日。優勝者は、お咲の恋人でもある古高新兵衛と目されていたが、新兵衛の木刀が不自然な形で折れて黒住団七が勝利し、新兵衛は命を落としてしまう。その試合に不審を抱いた主水之介は、長次に黒住の周辺を調べさせる。黒住らの一味は、新兵衛に続いて今度は伊賀守の毒殺を企てていた。お咲が薬屋の娘であることを利用し、お咲を使って薬湯に見せかけた毒を飲ませようとしたのである。お咲の実家に侵入し、毒薬の「岩見銀山」を奪う黒住一味。だがそこへ主水之介が現われ、一味は退散する。

さて、殿中。病床の伊賀守のもとへ、黒住に強要されて薬湯を運んでくるお咲。だが、毒と分かっているのに自らの手で伊賀守にそれを飲ませることはできない。止むに止まれず、彼女は覚悟を決めて薬湯を自ら口にしてしまう。だが、何事も起こらない。本物の薬湯だったのだ。そこへ現れる主水之介。黒住が岩見銀山を使って伊賀守毒殺を企てていることを長次の報告で知った主水之介が、中身を入れ替えておいたのである。黒住らは伊賀守の前で真相を暴かれ激高するが、主水之介に蹴散らされ、御家騒動は未然に食い止められた。

「生身の人間を賭けるとは、いかに当主とはいえ言語道断」と、伊賀守を諭す主水之介。伊賀守も自らの非を認め、最愛の古高新兵衛を失ったお咲に詫びの言葉をかけた。主水之介の進言で、お咲は長の暇を与えられる。お咲はもともと薬屋の娘。これからは小町娘にふさわしい、よき縁を得ることだろう。


小林夕岐子さん出演場面の解説

本作では登場場面はかなり多いです。セリフのある個所を中心に採り上げますが、チラッと写るだけのカットも、思わずハッとさせられる絵の連続。とにかく、和服姿の小林夕岐子さんは美しすぎるのです。



冒頭、実家の薬屋で、伊賀守奥方へのお土産品について、両親からあれこれ聞かされているお咲。「砂糖を詰めましたからね」と母親が言うと、

「まあ、きっとお喜び下さいますわ」

と答えます。そんな所へ、恋人である古高新兵衛が訪ねてきたと聞き、

「まあ、新兵衛さまが」

と思わず顔がほころぶお咲。「どんなお人だ」と父親に聞かれ、

「お父さま、新兵衛さまは香良洲山藩きっての剣の達人で、曲がったことの大嫌いなお方です」

と、嬉々として説明します。さっそく玄関先へ顔を出すお咲と両親。お行儀よくちょこんと座ります。両親は新兵衛に部屋へ上がるよう勧めますが、新兵衛は「今日は通り掛かりゆえ、ここにて」と固辞します。

「新兵衛さまはとてもお堅い方ですの。無理にお勧めしてもだめ・・・」

お咲はそう言って、

「あたくしお仕度が整いましたから、これからお屋敷へお供いたしましょう」

と、嬉しそうに新兵衛と出かけていきます。

途中、主水之介やおゆう達とすれ違います。主水之介に会釈をするお咲。主水之介は思わず彼女を振り返ってしまいます。「見かけぬ娘だが」と不思議そうな主水之介に、おゆうはちょっと嫉妬しながらも、「ま、あんな美人じゃ無理もないか」といった口調で彼女のことを教えてあげます。




奉納試合の当日。伊賀守はじめお偉方と、「賞品」にされてしまったお咲が見守ります。屏風を背にして鎮座まします小林夕岐子さんの神々しいお姿。

ところが、試合は思わぬアクシデントにより、恋人の新兵衛が敗北し命を落とします。

「新兵衛さま!新兵衛さま!」

新兵衛の亡骸にすがり付いて泣き崩れるお咲。それまで新兵衛の勝利を確信して落ち着き払っていたおすまし顔からの落差が絶品です。




試合に勝って、お咲を手中にした黒住団七らが悪巧みをしている一室。隣室には縄で縛られたお咲の姿がありました。後ろ手に縛られ、少しやつれた表情の何とも艶めかしい小林夕岐子さん。た、たまらん(;´Д`)。黒住が伊賀守毒殺を企てていると知ったお咲は、

「悪党!お殿様に何てことを!」

と声を上げますが、黒住は意に介せず、いやらしい笑みを見せます。試合で新兵衛を亡き者にしたのは、単に御家騒動を誘発する目的だけでなく、やっぱりお咲を我が物にしようという魂胆もあったのでした。

その夜、お咲が捕らわれている屋敷におゆうと長次が潜入し、一旦はお咲を奪回しますが、あっけなく黒住に発見され、連れ帰されます。



「私が?」

お咲は、黒住とグルになっている家老・辻堂内膳に、毒入りの薬湯を伊賀守に飲ませるよう強要されます。苦渋の表情を見せるお咲。しかし逆らうことはできず、そろそろと伊賀守の枕元へ薬湯を運びます。

薬屋の娘ということで信用しきっている伊賀守を見て、何とも居たたまれなくなったお咲は、いったん枕元に置いた薬湯をすばやく手にとって、自ら飲んでしまいます。目を閉じてしばらくじっと動かないお咲。でも、何事も起きません。薬湯に毒は入っていませんでした。このシーンでの目を閉じた表情、白く透き通った顔がとても印象的です。

その直後、主水之介が乗り込んできて黒住一味と大立ち回り。混乱の中、中間・六松が斬られます。彼が黒住に荷担してきたのは、お咲をお前の女房にしてやるという黒住の甘い誘いからでした。身分違いとはいえ、六松はお咲に恋心を抱いていたのです。死ぬ間際、お咲にそのことを打ち明ける六松。お咲は傍らで涙を流します。

「お前は、本当は悪人ではなかったのですね・・・」



御家騒動を未然に防ぐことができて一件落着、主水之介の忠告を受けて、伊賀守はお咲に「許せ」と詫びます。お咲は

「恐れ多いお言葉・・・」

と言うと思わず泣き崩れてしまうのでした。




ラスト、晴れ晴れした表情で町をゆくお咲と、主役たち。おゆうが主水之介に向かって、「あんなに若くて美人の娘さんだから、惚れたって無理はないですよ」と少し皮肉っぽく言うと、主水之介は「いや、俺は24、5の脂の乗りきった中年増に弱えんだ」と無理してみせます。そして、おゆうに向かって「ところでおめえ、いくつだ?」と切り返すのでした。




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