幡随院長兵衛 お待ちなせぇ

12話「甦った恋」

本編ストーリー 小林夕岐子さん出演場面の解説

本作は昭和49年4月5日放送開始で、現在(平成11年9月18日)判明している小林夕岐子さんの最後の出演作です。この作品、テレビ東京系で平成11年9月より再放送が始まったのですが、私はノーチェックでした。HP訪問者の方から小林夕岐子さんの出演情報を頂いたときは目が点になりました。何のことはない、私の地元のテレビ愛知でもちゃんと放送されていたからです。幸い、情報提供者のご厚意によりビデオを見ることが出来、小林夕岐子さんの最新の映像を見ることができました。

本作の小林夕岐子さんの役柄は、父の仇である悪徳商人三河屋の妾にされてしまっている腰元・お静。白地に青い朝顔の模様が入った着物姿です。雰囲気的には『旗本退屈男』の「お咲」とよく似ています。ともかくも、昭和49年にも小林夕岐子さんが女優活動をされていたと判明し、調査範囲が広がりました。


本編ストーリー

先代三河屋の主人は大きな回船問屋を営んでいたが、訴えがあって奉行所が調べたところ、大規模な抜荷が発覚。三河屋の店は取り潰し、主人は死罪、その娘・お静の婿になるはずだった番頭の吾助(河原崎次郎)は島送りとなっていた。訴えは、三河屋の手代だった嘉平という男の策略で、先代三河屋は濡れ衣を着せられたのである。そしてお静は、今や先代の看板を引き継いで札差三河屋となった嘉平の妾に身を落としていた。

務めを終えて島から帰ってきた吾助は、三河屋から命を狙われていたが、偶然通りかかった幡随院長兵衛(平幹二郎) の子分・唐犬権兵衛(沖雅也)と留吉(小松政夫)に助けられる。長兵衛は町奉行から、吾助を預かって欲しいと頼まれる。先代三河屋の冤罪を証明する大事な証人だという。だが、留吉が目を放した隙に吾助は幡随院の屋敷を抜け出し、三河屋の屋敷へ行って、そこでお静に再会するが、彼女は「私はもう昔のお静じゃない・・・」と言って彼を追い返した。

吾助を逃がしてしまったことを権兵衛からきつく叱責された留吉は、往来で吾助を見つけるが、運悪くそこで長兵衛と敵対している直参旗本・坂部三十郎(穂積隆信)と出くわし、坂部に吾助を連れ去られてしまう。

吾助が三河屋を恨んでいると知った坂部はこれを利用し、かねて目の敵にしていた三河屋を脅迫するが、三河屋は坂部を取り込むために五百両を差し出し、更にはお静に坂部の一夜の伴をさせようとする。長兵衛の命で坂部の周辺を探っていた小仏小平(田中邦衛)は、権兵衛、留吉と共に三河屋に潜り込み、坂部と三河屋の話から、先代三河屋は嘉平の策略で濡れ衣を着せられたことを知る。

小平らは、部屋でお静に乱暴しようとしていた三河屋を捕らえ、幡随院の屋敷で、先代三河屋を陥れた顛末を詳らかにした覚書きに血判を押させるが、三河屋は強要されたと奉行所に主張することが明らかだと考えた権兵衛らは、三河屋を当て身で気絶させる。

そして、夢の市部兵衛 (江守徹)らは一計を案じ、坂部の屋敷から吾助を助け出し、気絶させた三河屋を代りに屋敷に放り込む。そして、三河屋の者を装って帰路の坂部を脅し、「お前に五百両はもったいねえ」と、彼の小判を奪い取り、坂部を籠ごと屋敷の門に叩き付ける。たまたまそこへ、我に返った三河屋が現われ、逆上した坂部は三河屋を斬り捨てた。

市部兵衛は、坂部から奪い取った五百両を、「三河屋からの涙金だ」と言って吾助に手渡す。その頃、お静は三河屋の屋敷で自害しようとしていたが、間一髪、駆けつけた長兵衛に助けられた。

「昨日の晩で、今までの吾助、お静は一旦死んだと考えて、今日からまた新しく生き直すことを考えてくれないか」と長兵衛に諭された吾助とお静は、数日後、皆に見送られ、晴れ晴れとした顔で江戸を発って行った。

その頃江戸は、大商人三河屋が輪切りにされた話で持ちきりであったが、誰一人、その非業の死を哀しむ者はいなかったという。


小林夕岐子さん出演場面の解説

本作の小林夕岐子さんは当時27歳、艶っぽさも加わって恐いくらいの美しさです。時代劇での小林夕岐子さんをもっと見てみたいです。



三河屋の屋敷で、勘定奉行・坂本にお酌をしているお静。ちょうどお銚子が空になってしまい、

「失礼いたしました。早速・・・・」

と言って席を外します。お静が新しいお銚子を運んで来ると、三河屋と奉行が何やら悪巧みをしているのが聞こえてきます。

その頃、屋敷に忍び込んだ吾助。縁側の一室は障子が開いています。奉行が「わしと三河屋と、どっちが情が深い」などといやらしい笑みを浮かべながらお静に抱き付きます。お静は、

「明るうございます。お許し下さいませ・・・」

と、なんとか抵抗を試みるのですが、立場上彼女は逆らうことが出来ません。やがて奉行は縁側の障子をさっと閉めます。障子の向こうで何が行われているのか、外で見ている吾助は居たたまれません(私も居たたまれない・・・)。しかし、例によって途中の経過は省略、奉行が障子を開けて出て行くシーンに繋がります。

奉行が去ったのを見極めてから、吾助がお静の前に姿を見せます。「お静さん・・・俺が誰だか忘れちまったとは情けねえ・・・おれは一度、お前さんの亭主になるはずだった吾助ですぜ」。思いもかけない再会に、お静の顔は石のように固まってしまいます。

「吾助さん、お前・・・生きて・・・」

それだけ言うと、お静はもう吾助の顔を真っ直ぐに見ることが出来ず、背を向けてしまいます。



途中、幡随院の屋敷から吾助が姿を消したことを知った唐犬権兵衛(沖雅也)が血相を変えて飛び出してくるシーンを挟んで、再び吾助とお静のいる屋敷の一室。

「・・・お静さん、お静さん!」必死に呼びかける吾助ですが、お静は彼に背を向けたまま、

「吾助さん、帰っておくれ・・・帰っておくれ・・・!」

と彼を突き放します。吾助が「一目お嬢さんに会いたいばっかりに俺は、死ぬよりも辛いお務めを歯を食いしばって生きてきたんだ・・・その俺に、帰れとお前さんは言うのか・・・」と言うのを聞いて、彼に背を向けたまま、苦渋に満ちた表情で言葉を絞り出すお静。

「私は・・・昔のお静じゃない・・・今じゃ、お父っつぁんの仇の三河屋の・・・」

「言うな!」とお静の言葉を遮る吾助。お静の辛い身の上を思うと、見ているこちらも胸が痛みます・・・。

「お前は生きて帰ってこないと思って・・・堪忍しておくれ・・・!」

それだけ言うとお静は泣き崩れてしまいます。たまらず吾助はその場を飛び出します。しかし、お静にはどうすることもできません。

吾助は懐に出刃を忍ばせ、三河屋嘉平への復讐に向かいます。途中、彼を探していた留吉に見つかってしまい、連れ戻されそうになりますが、ちょうど悪いことに幡随院長兵衛と敵対している白柄組の旗本坂部三十郎(穂積隆信)の一行に出くわし、吾助は坂部に奪われてしまいます。吾助が三河屋を恨んでいることを知った坂部は、かねてより目障りだった三河屋を脅迫するネタとして吾助を利用しようと企みます。



三河屋の屋敷に赴く坂部。三河屋がかつて吾助に濡れ衣を着せて主家をつぶし、吾助の女房になるはずだった主人の娘を妾にしているということをネタに彼を脅迫します。しかし三河屋は、お静を妾にしたことはともかく、濡れ衣云々は身に覚えが無いと白を切り、そして、お互いの得になる話をしましょう、と言って坂部に五百両を渡します。してやったりの坂部。

そこへ、お静が入ってきて、坂部にお酌をしますが、吾助は坂部の屋敷の地下牢に放り込まれているという話が出ます。お静もそばにいるのですが、三河屋は、吾助は斬るなりなんなりご自由に、と言います。そして、お静に坂部の今晩の相手をさせようとします。

さてしばらくして、別室で悲しそうに佇んでいるお静のところに三河屋が現われ、「お前まだあの吾助に未練が・・・」とお静に近づき、「今夜、よーく坂部様に命乞いしてみるんだな」と不敵な笑みを見せます。それを聞いたお静はキッと三河屋を睨み返します。

「お前はやっぱり、あの人に濡れ衣を着せて・・・!」

三河屋は「何を今さら。もう一昔も前のことだ」と言って、お静に手をかけます。お静はかんざしを抜いて三河屋に抵抗しますが、女の力ではかなわず、大ピンチ!と、そのとき、屋敷に潜入していた小仏小平(田中邦衛)と唐犬権兵衛が駆け付け、三河屋を捕らえます。そしてお静も一緒に連れ帰ろうとしますが、お静は断ります。

「私は坂部様のお相手をします。でないと吾助さんの命が・・・」

吾助を思う健気な女心、泣かせます・・・。



三河屋が坂部に斬られ、一件落着、しかし、お静のことが気になります。もしや・・・という吾助の危惧通り、お静は三河屋の屋敷で自害しようとしていました。鏡に向かって口を拭き、足を白布で縛って、剃刀を手に取ります。荘厳な富田勲氏の音楽と相俟って、小林夕岐子さんの高貴なお顔が一段と映えて見えます。お静は覚悟を決めて首筋を切ろうとしますが、間一髪、長兵衛が駆けつけ、お静の腕をつかみます。

「離して!死なせて下さいまし!」

長兵衛はお静の剃刀を奪い取ります。「たった一つ授かった大事な命だ。無駄にしちゃいけねえよ・・・お前さんには吾助さんという人がいなさるはずじゃねえか」。うな垂れていたお静ですが、坂部の屋敷から心配して駆けつけた吾助の姿を見て、その顔に少し落ち着きが戻ります。



翌日、幡随院長兵衛の屋敷。吾助とお静を前に、長兵衛が諭します。「あの晩でこれまでの吾助、お静は死んで、新しく生まれ変わったんだと思いなせえ・・・人間、死んだ気になれば出来ねえことなどありゃしねえんですよ」。それを聞いて、お静もしっかりと答えます。

「親分、私、もう一度吾助さんと生き直してみます」

お静の言葉を聞いて、吾助は「お静さん、ありがてえ・・・」と涙を流します。お静も思わずもらい泣き。お茶菓子を運んできたおきん(大原麗子)もさすがにその場の雰囲気には踏み込めませんでした。



数日後、長兵衛らに見送られて板橋の宿場を発っていく吾助とお静。ここではお静は地味な着物になっています。ともかく今回はハッピーエンドでよかったです。テレビ作品のゲストでは、殺されてしまう役が多かったので・・・。




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