「アンドロイド0指令」シナリオとの比較




「アンドロイド0指令」シナリオ決定稿を見る機会がありましたので、完成作品との比較を行い、相違点について検討します。シナリオからの引用部分は青字で、完成作品のセリフは緑色で表記しています。

全体的に見て、完成作品ではシナリオの冗漫な部分などが適度にカットされて、テンポ良く仕上がっていると思います。決定稿なので、当該セリフは収録はされたが編集でカットされたということかもしれません。未公開シーンを思い浮かべるととても興味深いです。


1.冒頭

完成作品では、ウルトラホーク発進シーンのバンクフィルムが流れ「地球防衛軍ウルトラ警備隊・・・」云々といったナレーションが入りますが、シナリオにはこの部分が無く、夜の街を走るポインターのシーンから始まります。

1 夜のハイウェイ
        夜風を切るポインター。
        パトロール中。

2 ポインターの中――路上(夜)
        フルハシが運転、助手席にソガ。
        突如、ヘッドライトの中に女が入る。(ゼロワン)
        ゼロワン、手をあげる。
        フルハシ、ブレーキを踏む。
        ソガ、レーザーガンに手をかける。
        ゼロワン、近ずいてくる。
フルハシ「(小声で)おい、シャンだぜ」
        ソガもホッとする。
ゼロワン「ウルトラ警備隊の方ですね?」
フルハシ「そうだ」
ゼロワン「あの、モロボシ隊員では・・・・・・?」
フルハシ「オレ?(茶目ッ気で)そう、モロボシ・ダン」
ゼロワン「(微笑)ぜひお会いしたくって・・・・・・」
とほっそりした手をさしのべる。

完成作品では、道路にいきなり飛び出してきたゼロワンに驚いてフルハシがブレーキを踏むのですが、シナリオではゼロワンが呼び止めたような形になっています。フルハシのセリフ「おい、シャン(=美人)だぜ」はカットされていますが、その後の、ダンと間違われたフルハシがにやけている描写があれば充分だと判断されたのでしょうか。ゼロワンの息を呑むような美しさは、安易な「美人」という言葉では言い表せないと思いますし、また、ゼロワンを一目でも見た者は、絶対に「あの顔は忘れん」(byソガ隊員)はずです(笑)

ゼロワンの「ぜひお会いしたくって・・・・・・」は今ひとつイメージに合わないので(何か軽い感じ)、これは完成作品の「お会いしたかったんです」の方がしっくり来ます。

また、シナリオではフルハシはゼロワンの「ペンダント」を掴むのですが、完成作品では胸にピンで留めた「ブローチ」になっており、その後のセリフも、シナリオでペンダントとある部分は完成作品ではブローチになっています。ところが一箇所だけ、アマギがダンにビデオシーバーで連絡するシーンで「例のペンダントを分析した結果、宇宙金属と判明したぞ」と言っています。その後、子供が落としたワッペンの分析結果を報告するシーンではアマギは「これもあのブローチと同じ宇宙金属です」と言っています。ビデオシーバーのシーンのアマギは合成なので、ここだけ差し替えを忘れたのでしょうか?


2.作戦室

翌日の作戦室、負傷した手を包帯でぐるぐる巻きにしたフルハシと隊員たちが話しているシーン。

アンヌ「あわやショック死ってとこよ、よほど心臓が弱かったのね」
フルハシ「面目ない、女だと思ってつい油断してしまって」
ソガ「なんかこう、スーッと引きこまれる感じだったんだ」

アンヌのセリフは、完成作品ではキリヤマ隊長の「あわやショック死ってとこだったんだぞ」に置き換えられています。本シナリオ上では、アンヌのセリフは上記の一つだけで、ひし美ゆり子さんご自身も著書『セブンセブンセブン』75頁(文庫版では80頁)で「私のセリフはたったの1行」と述べられています。完成作品ではそのセリフも無くなっていますが、アンヌは画面上には辛うじて映っています。

ソガのセリフはカットされていますが、相手が小林夕岐子さんなら誰だって引き込まれてしまいますよねえ(笑)


3.団地前の公園〜じいさんの住み家〜作戦室

ここでは相違点を箇条書きしておきます。

・公園でじいさん(植村謙二郎)が子供たちにおもちゃを与えるシーン、シナリオでは女の子に渡した人形が「今日はお嬢ちゃん」と口をきく場面があるがカット。

・おもちゃじいさんの後をつけてきたダンとソガが近所のおかみさんに話を聞くシーン、話の途中でダンのビデオシーバーが鳴る(アマギからの通信)。シナリオでは、その通信が終わってからおかみさんに礼を言って別れているが、完成作品ではおかみさんと別れた後に通信をします。

・おもちゃを買うと一緒に付いてくるワッペンについて、シナリオでは奇妙な文字のイニシャル(フルハシが奪い取ったゼロワンのペンダントと共通)が入っており、アマギはイニシャル部分が受信機になっていると説明します。完成作品ではワッペンにイニシャル文字は入っておらず、アマギはワッペンの中心部を指して「この部分が受信機になっているようです」と説明しています。


4.じいさんの地下室

地下室でじいさんがチェスの駒を動かすシーン。シナリオでは盤が正式なものではなく、東京23区の地図?とされている。

じいさん「ここもよし・・・・・・ここもよし」
       と駒を動かし、最後に王様を手にして、
じいさん「とどめは、ここだ!」
       パチッと駒を打ちこむ。
       快心の微笑。
じいさん「(ふと真顔になり)そろそろおでましってとこかな」

完成作品では通常のチェスの盤を使っており、セリフは「これもよし・・・・・・これもよし」「とどめは、これだ!」「さあて、そろそろ、出かけるかな」となっている。シナリオではこの前に、じいさんの地下室の中で、ボタンを押すと壁がくるっと回転して東京の大地図が現れるという描写がある。そして地図は23区がほとんど塗りつぶされている。ダンとソガが計画に感づいたと知り、「こっちも準備完了だ・・・」と呟くのはシナリオ・完成作品とも同じ。それにしても、おもちゃじいさんはリヤカーを引いて東京中を隈なく行脚していたのか・・・・。


5.夜のビル街

疾走するポインターの目前にゼロワンが飛び出してくる。シナリオではゼロワンをポインターで追跡するが、完成作品では、ダンとソガはゼロワンを見るやすぐにポインターを降り、走ってゼロワンを追いかける。ゼロワンが逃げ込んだと見られるビルの入り口は、シナリオではシャッターが少し開いたままになっているという描写だが、完成作品ではシャッターが徐々に下りている映像になっている。中に踏み込むダンとソガ。

16.マルヤデパートの中(夜)

        ダンとソガ、店内を見回す。
        後方でガラガラとシャッターが落ちる。
        ソガ、かけ寄って開けようとするがびくともしない。
ソガ「くそ!」
        と、場内アナウンスが聞える。
アナウンス「本日はようこそおこし下さいました。まもなくアンドロイド・ゼロ指令が
      発令されます。ご期待下さいませ」

ソガ「誰だ!出て来い!」

完成作品では最初からシャッターが閉まりかけているので、突然後方でシャッターが落ちるという描写はありません。「M地点(=マルヤデパート)」に誘い込んでモロボシダンの動きを封じる、という作戦目的から、二人が店内に閉じ込められたと印象付けるための描写と解釈することもできますが、この部分はやはり不要だと思われます。閉じ込めること自体が罠ではなく、チブル星人が仕組んだ本当の罠はもっと先にあるのですから。

アナウンスについては、上記の「本日はようこそおこし下さいました。・・・」は使用されず、シナリオでも後に登場する「お客様にお知らせします。午前零時の時報と共にアンドロイド0指令が発令されます。あとしばらくお待ちください」に統一されます。小林夕岐子さんの冷たく無機的な声で事務連絡のような淡々とした文言が繰り返され、謎めいた「0指令」発動への緊迫感が高まって行きます。


6.デパート・上の階

おもちゃじいさんがダンとソガにアンドロイド0指令の内容を語るシーン。ソガは話を信じようとしない。

じいさん「では納得させてあげようかな、お二人にはそれから死んでもらおう」
ゼロワン「私が殺してさしあげます」
じいさん「いや、もっと面白い方法がある、納得しながら死んでいくってのはど
     うだ」

ソガ「その前にこれでもくらえ!」
        レーザーガンをじいさんに向ける。
        じいさん、パッと姿を消す。
        ソガ、ゼロワンに向けて射つ。
ゼロワン「・・・・・・(平然)」
ダン「・・・・・・無駄だ」
ソガ「・・・・・・」 

この後、おもちゃが一斉に動き出し、戦闘機や戦車、ロボットなどがダンとソガに襲いかかり、逃げ回る途中、ダンがレーザーガンで戦闘機を撃ち落すという描写もあります(完成作品では全く反撃せず)。また、二人が乗り込もうとしたエレベーターの中にゼロワンが立っているという場面においては、シナリオではゼロワンが電撃を放つシーンはなく、またその直後、別の廊下を逃げるダンとソガが戦車部隊に遭遇、立ち尽くすダンが振り返るとそこにまたゼロワンが立っている、といった描写があります。どこへ逃げてもゼロワンが監視しているという、シナリオで描かれた状況も怖いですが、新たに映像化されたエレベーター内での畳み掛けるような電流攻撃シーンはそれに勝る鮮烈な印象を残していると思います。

完成作品では、「では納得させてあげよう」のすぐ後にじいさんが手をかざしておもちゃを兵器化し、以降のセリフはカット。小林夕岐子さんの「私が殺してさしあげます」は是非聞いてみたかったのですが・・・(笑)。


7.デパートの一室

ほうほうの体で一室に逃げ込んだダンとソガ。ドアに鍵をかけるが、ゼロワンが外からドアを開けようとする。

25.デパートの一室

        ダンとソガが懸命にドアを押している。
        だが、ジリジリとドアが押しあけられる。
        恐るべき怪力だ。
        ついにドアが開けられる。
        そこに立っているのはゼロワン。
        ゼロワンの後方にはじいさん。
じいさん「さ、お二人にお前の殺人法を見せてあげなさい」
ゼロワン「・・・・・ハイ」
        ゼロワン、ジリッと寄る。
        ダンとソガ、後退する。
        ゼロワン、迫る。

完成作品では、ドアを開けるなどと言う生易しいものではなく、ドアそのものがバタンと正面に倒れてきます。じいさんとゼロワンのセリフは両方ともカット。ちなみに、6.7.のシーンの繋がりを考えてみると、6.でゼロワンが「私が殺してさしあげます」と言った後にじいさんが「いや、もっと面白い方法がある。(おもちゃが本物になることを)納得しながら死んでいく(=おもちゃに殺される)ってのはどうだ」というアイデアを出していながら、7.ではゼロワンに「さ、お二人にお前の殺人法を見せてあげなさい」と言い出すのはやや不自然な気がします。ゼロワンも普段はマネキン(≒おもちゃ)で、それが本物の武器になってダンとソガを殺す、という解釈も出来なくもないですが、少なくともダンとソガはゼロワンがマネキンであることを知りません。

完成作品ではこれらのセリフを大胆にカットしたことで、却ってダンとソガに迫る危機がより緊迫感をもって伝わってくるように思います。


8.デパート屋上

27.同・屋上(夜)

       ゼロワンとじいさんとびでてくる。
       セブン、追ってくる。
       じいさん、おびえたようにゼロワンの後方にかくれる。
じいさん「あの時にモロボシを殺してさえおけば・・・・・・」
ゼロワン「もう、何もかも終わりです・・・・・・」
       セブン、アイスラッガーを投げる。
       アイスラッガー、ゼロワンを回って戻ってくる。
       ゼロワンが、マネキンになる。
       マネキン、倒れる。五体がバラバラになる。

おもちゃじいさんも、完成作品ではさすがにゼロワンの後ろに隠れるような醜態は見せません。また、完成作品ではゼロワンはエメリウム光線を額に受けてマネキンに戻るという描写になっています。セブンに追い詰められたゼロワンとじいさん。電撃を放とうとするゼロワンだが、一瞬早くセブンのエメリウム光線がその額を貫く。アイスラッガーを使うシナリオの描写よりも、完成作品の方が居合抜きのような決まり手で爽快です。

そしてじいさんがチブル星人の正体を現し、セブンに向かってきますがあっけなく敗北。チブル星人の弱さはシナリオでも強調されています。

       知能だけが発達したチブル星人。戦う力などまったくなく、ヒー
       ヒー悲鳴をあげながら逃げ回る。

       チブル星人、物陰に頭を突っ込んでかくれようとするが、頭
       デッカチなのでかくれることができない。

       セブン、チブル星人をひきずり出す。チブル星人、必死の思い
       で急遽反撃に転じる。

       ポンと宙にとびあがり、クラゲのようにプカプカ浮かびながら、
       波状攻撃をくりかえす。
       (だがそれはセブンにとって蚊が刺すようなものだ)

       セブン、ウルトラビームを浴びせる。
       チブル星人、あえなく墜落。あぶくのようにブクブク溶けはじめる。

完成作品では、操演の都合からか、あまりチブル星人を縦横に動かすことなく、セブンが透視?する戦車部隊のイメージなどを交えて(チブル星人の心理作戦?)描かれますが、あっさり倒される点は同じです。


9.ラストシーン

シナリオでは舞台はデパートの表になっていますが、完成作品ではセブンとチブル星人が対決した屋上となっており、チブル星人を倒したセブンがダンの姿に戻った直後、現場にキリヤマ隊長らが駆けつけるため、ここでもシナリオよりもテンポ良く展開します。

28.マルヤデパート表(夜)

       ポインターが到着する。
       キリヤマ、フルハシ、アマギがおりる。
       デパートから、ダンがソガを担いで出てくる。
       一同、「ダン!」「無事だったか」などとかけよる。
ダン「ウルトラセブンのおかげです」
キリヤマ「そうか、事件を未然にくいとめることができて本当によかった」
       フルハシ、溝の所に捨てられてあるおもちゃのレーザーガンを
       拾ってソガに向ける。

ソガ「(青くなり)よ、よせよ!」
       ガンの先からチュッと水。
フルハシ「ハハハ、おもちゃだよ」
キリヤマ「(笑って)しばらくはおもちゃ恐怖症だな」
       ダン、腕時計を見る。
       12時、1分前。
       キリヤマ、ダンの肩をたたく。
キリヤマ「もし、ゼロ指令が本当に発令されていたら、世の大人たちは手も足
      も出なかっただろうな」

ダン「(頷き)恐ろしい計画ですよ・・・・・・」
       一同、ポインターにのりこむ。
       ポインター、走りでていく。
       眠りかけた大都会。その一隅の電光時計が、丁度、午前0時を
       知らせている。


完成作品では、キリヤマの「事件を未然に食い止めることができて本当によかった」のすぐ次に「もし、ゼロ指令が本当に発令されていたら・・・」が続きます。フルハシがおもちゃのレーザーガンでふざけるくだりはカットして正解でしょう。このシーンは明らかに蛇足だと思います。

そして、時計が0時を指したとき、簡潔なナレーションがストーリーを締めくくります(ナレーションはシナリオには無し)。

「午前0時。だが、何事も起こらない。街は、平和に眠っていた」



inserted by FC2 system