日本一のヤクザ男


半裁ポスター
公開年 脚本 監督 出演者
1970年 田波靖男 古澤憲吾 植木 等・司 葉子・野川由美子・
小林夕岐子・ハナ肇・藤田まこと

本作での小林夕岐子さんの役柄は、なんとヤクザの組長の妹!土建業で屋台骨を支える前野組組長(田崎潤)の妹、前野由紀子です(年が離れすぎ)。でも、彼女は義理だの筋目だのといったしきたりには批判的な、ちょっと気の強い女の子。同じ前野組の若者・健次(山下洵一郎)という恋人がいますが、運命のいたずらから、由紀子は兄の仇である渡世人・日本(ひのもと)一郎(植木等)に惹かれるようになってしまいます。

本作での小林夕岐子さんは、シーンによって色白だったり小麦色の肌だったりします。衣装は目の覚めるような鮮やかな赤の小袖で、柄は3種類あります。

以下、出演場面を紹介します(1〜6)。



由紀子(小林夕岐子)が前野組の屋敷からパタパタと駆け出してきます。根本組の組長に絡まれているところを助けてくれた日本一郎(植木等)と一緒に帰る途中の姉・登志子(司葉子)を捕まえると、

「姉さん!健次さんが根本組に殴り込みをかけるって!」

と息せき切って伝えます。屋敷に戻ると、工事の妨害を繰り返す根本組に業を煮やした健次(山下洵一郎)らが今まさに出発しようとするところでした。登志子は、血気にはやる健次を抑えて説得しますが、そこへ一郎が割って入り、自分が相談に乗ってやろうか、と持ちかけます。すると、横に座って聞いていた由紀子が立ち上がって、

「健次さん、お願い!行かないで!」

と訴えますが、健次にちょんと突き飛ばされてしまいます。「俺がやらなきゃ誰がやるんだい」と、まったく意に介しない健次を見て由紀子もふくれてしまい、

「何よ、かっこつけちゃって!健次さんなんて嫌い!兄さんみたいに殺されても知らないから!」

と言って、その場から飛び出してしまいます。



前野組の殴り込みのお膳立てをしてやる一郎。彼は巧みに根本組長を誘い出し、健次ら前野組の若い衆に囲まれた丸腰の根本組長は命乞いをします。ところが、一郎は根本組に寝返り、根本組長を逃がしてしまいます。呆然として屋敷に帰って来る健次たち。由紀子が

「姉さん!健次さんたちが帰ってきたわよ!」

と登志子に知らせに来ます。このセリフの「姉さん!」の部分、明らかに声が裏返っています。「すまねえ、根本の奴を殺り損なっちまった」と登志子に詫びる健次を見て由紀子は

「でも、その方がかえって良かったわ」

と声をかけます。



かつて先代組長・前野武造と一郎の決闘の現場に居合わせた熊井吾郎(藤田まこと)が前野家に帰ってきて、「日本一」と偽名を使って町に居着いている一郎が実は組長の仇・日本一郎であると分かります。

吾郎が登志子・由紀子と一緒に廊下を歩きながら声を交わしています。さっそく一郎に果たし状を突きつけて組長の仇を討ってやる、と息巻く吾郎に由紀子は、

「もう殺し合いはたくさん!どっかで止めなきゃ、きりがないわ!」

と訴えます。このセリフでも、「たくさん」と言う部分で声が裏返っていました。また、この「どっかで止めなきゃ」という部分がなかなか聞き取れませんでした。吾郎に「血肉分けたきょうだい殺されて、憎かねえのかい?」と問われた由紀子は毅然と答えます。

「あの人だって殺したくて殺したわけじゃないわ。あなたたちが大好きな渡世の義理とかいうくだらないもののためでしょ」

「それがあっしらの通し抜かなきゃならねえ筋目ってもんだ」という吾郎に、由紀子はその場に座りつつ反論します。

「あたしはそんな考え嫌いよ。兄さんだって、そんなヤクザから抜け出すために土建業始めたんじゃないの。そうでしょ、姉さん」

3人が話しているところへ、「日本一郎の居所が分かった」と言って健次が駆け込んできます。早速果たし状を届けようとする彼らを見て、由紀子は思わず立ち上がって訴えます。

「健次さん行かないで!あたしを好きだったら、果たし合いなんてやめてちょうだい。姉さんも黙ってないで何とか言ってよ。姉さんだって、あの人に助けられたこともあるんでしょ」

しかし、登志子は「前野の仇となれば話は別です」と言って、苦渋の選択で自ら果たし状を届けに行こうとします。それを見て由紀子は口をへの字にしてプイッと出ていってしまいます。ぷんぷん怒った顔がとても可愛い!ちなみに、由紀子は江戸っ子なので、「あの人」を「あのしと」と発音します。



一郎が、山水建設社長(多々良純)と鉄道工事の受注について交渉している旅館の一室。一郎は、芸者の鶴子(野川由美子)に社長の相手をするように言って、二人を退室させると、由紀子が入れ替わりに部屋に入ってきます。由紀子は開口一番、一郎に

「日本さん、今すぐこの町から出ていってちょうだい!」

と迫ります。

「あなたが兄の仇だということが分かって、みんなで殺そうとしてるんです」

「やっと分かったか、もうちょっと早くバレると思ったけど、意外に長くもったな」という一郎を由紀子が

「呑気なこと言ってる場合じゃないわ、さあ、早くして!」

と急かしていると、仲居が「お客様です」と知らせてきます。

「あっ、きっとお姉さんよ、あたしがいることは黙っていてね!」

と言って、由紀子は隣の部屋に隠れます。彼女の言う通り、客は一郎に果たし状を届けに来た登志子でした。登志子は一郎に、何も言わず町から出て行くように頼みます。それがせめてもの恩返しだというのです。この町が気に入ったからと言ってその申し出を断る一郎に、やむなく果たし状を渡す登志子。しかし、中を読もうとする一郎を思わず止めてしまいます。「読んでしまったら、あなたは果たし合いにいかなければならない…私の苦しい胸の内を察して下さいまし」。思いがけず一郎の手に触れてしまう登志子。「姐さん、それほどまでにこのあっしのことを・・・・」。登志子の手を取る一郎。

すると突然、お膳が飛んできて一郎の頭にポカンと命中します。犯人は、二人の様子を障子の隙間から覗いていた由紀子でした。彼女はついにたまりかねて飛び出してきます。

「姉さん!姉さんの嘘つき!虫も殺さないような澄ました顔して、本当は日本さんのこと好きだったのね!」

わざと登志子に背を向けて話していた由紀子が、クルッと向き直って登志子を睨み付けます。「好きだなんて、そんな・・・」と言う登志子に、

「隠したって駄目よ。恐ろしい人ね・・・日本さんを一体誰だと思ってるの?姉さんの夫を殺した仇じゃないの!」

と畳み掛けます。登志子に「じゃあ、あなたは何しに来たの?」と聞かれた由紀子は、ふんっとあごをしゃくりあげて顔を背けます。登志子は、「先回りして日本さんを逃がしに来たんでしょ。日本さんは私にとっては夫の仇、あなたには兄の仇。しかも健次さんという人がありながら、なんて人でしょう!」と叱りつけますが、由紀子はひるみません。

「健次さんなんか大嫌い!あたしが好きなのは日本さんよ。日本さん、逃げるなら一緒に逃げましょ、連れて行って」

そう言って、一郎の方に駆け寄ります。「許しません!そんなこと」と言う登志子の方を向き直ると、

「何さ、姉さんも日本さんのこと好きなら好きってはっきり言ったらいいじゃないの!」

登志子は「何を言うんです、いい加減に目を覚ましなさい!」と言って由紀子にビンタを浴びせます。

「ぶったわね!」

いい年をして取っ組み合いのケンカをする登志子と由紀子。止めに入る一郎に、由紀子は

「日本さん、あたしを取るか姉さんを取るか、どっちかに決めてちょうだい!」

と、究極の選択を迫ります。由紀子に

「あなた男でしょ!」

とまで言われて、それじゃあ、と真剣に二人を見比べる一郎ですが、やがて、由紀子の方を見て「よーし、決まった!」と叫びます。おお、さすが分かってるな!・・・と思ったら、一郎はなんと足元に落ちていた果たし状を指差します。登志子と由紀子はガガーン!と大ショック。この由紀子のどアップの表情が秀逸!顔のディテールもつぶさに分かります。



一郎と吾郎の果たし合いの場所に急ぐ登志子と由紀子。しかし、思わぬアクシデントにより、戦わずして吾郎がダウンしてしまい、勝負はお流れになります。そこへ二人が到着します。

「良かったわ、二人とも無事で」

と安堵する由紀子。その後、前野組の先代組長を撃った拳銃が根本組の物と分かり、犯人が日本一郎でないと判明します。



登志子の前野組二代目襲名式の日、根本組の組長(安部徹)が「山水建設の鉄道工事はウチに決まった」と言うのを聞いた健次は、「話が違う」と言って一郎を問い詰めます。そんな所へ由紀子が走ってきて、

「大変よ、姉さん喜んで!山水建設が仕事のことで相談したいって来たわよ!」

と喜び勇んで伝え、誤解が解けます。



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