華麗なる闘い


パンフレット表紙。併映は加山雄三主演『弾痕』。

公開年 脚本 監督 出演者
1969年 大野靖子 浅野正雄 岸恵子・内藤洋子・田村正和・
神山繁・浜木綿子・平田昭彦

【ストーリー】 【小林夕岐子さん出演場面】 【詳細キャスト紹介】 【パンフレット記事紹介】

原作は有吉佐和子「仮縫」(現在は集英社文庫で入手可能)。華やかな服飾デザインの世界を舞台にした大作で、三越と杉野学園ドレスメーカー女学院が協力しています。監督の浅野正雄氏は同じく服飾デザインを題材にしたテレビドラマ「マドモアゼル通り」(1972年)でもメイン監督を務めました。


ストーリー

戸田洋裁に通う清家隆子(内藤洋子)は、あるとき院長室に呼ばれ、高名な服飾デザイナー・松平ユキ(岸恵子)と引き合わされる。ユキは高級洋装店オートクチュール・パルファンを開いており、そのスタッフとして隆子が欲しいと言って来たのだ。

パルファンで目の当たりにした光景に隆子は息を呑む。豪奢な宮殿のような造りの仮縫室、フランス王朝の貴婦人のような常連客。彼女の周りを何人もの縫い子が取り巻き、召使のように傅いている。隆子が初めて知った上流階級の世界であった。

隆子はパルファンの縫い子として着実に努力を重ね、次第に頭角を現すようになった。やがて古参スタッフの一人・小式部クミ(市川和子)が独立を企てていると発覚、ユキは小式部を追放し、代わりに隆子を抜擢する。自信を得た隆子は、いつしかパルファンを自分の物にするという野望を抱き始めていた。

隆子はユキの右腕として活躍するようになる。そんな折、ユキのパトロン的存在であった画商の相島昌平(神山繁)が贋作流通疑惑で世間から糾弾され、ユキはその心痛を癒すため相島と共にパリへ行くと言い出した。そしてその間、ユキはパルファンを隆子に任せたいと言う。

だが、ユキがパリに行く真の目的はパルファンの借金逃れだった。実はパルファンの経営は全く不安定で、今までも相島の後ろ盾で何とかやって来ていたのである。隆子にはその尻拭いと重責だけがのし掛かって来た。だが隆子は、パルファン立て直しのため自らを奮い立たせる。それはユキへの挑戦でもあった。

雑誌にデザインを積極的に公開し、デパートと提携してプレタポルテにも進出するなど、隆子は新企画を精力的に展開。ところが、店に入金されるはずの掛売り代金は既にユキ個人の手に渡っていた。経理は弟の信彦(田村正和)に任せてあるというユキの言葉は全くの嘘だったのである。これではスタッフの給料も払えない。

途方に暮れていた隆子に、相島から電話が入る。相島はパリには行っていなかったのだ。最初から贋物として売り出したらかえって注文が増えて商売繁盛だ、と笑う相島。彼は資金繰りに苦しむ隆子に300万円の小切手を与えようとするが、隆子はあくまで借用すると主張した。その日、隆子は相島に誘われるまま彼の部屋で一夜を共にする。隆子は、自分がのし上がるためには何でも利用するという強さを次第に身に付けていく。

待遇が改善されてスタッフの士気も高まり、隆子の率いるパルファンは次第に軌道に乗って来た。相島が用立てた300万円も、隆子は僅か三ヶ月で返済する。秋にはデパートの後援で独自にファッションショーを開くことになり、隆子は仕事の鬼と化してゆく。ユキの弟・信彦は隆子にプロポーズするが、ショーのことで頭が一杯の隆子は彼を相手にしない。一方で隆子は相島と急接近する。ある夜、ついに隆子は彼の部屋で宣言した。今度のショーで清家隆子の名前を徹底的に売り出してみせる、そしてパルファンと自分を切り離せる時が来たら、その時は独立する時だ・・・と。

だがそんな折、パルファンに突然、ユキ帰国の一報が飛び込んで来た。しかも本人からではなく、パリ滞在中のモデルを通じての伝言だった。

ユキはパリから40点もの新しいデザインを持って帰っていた。隆子のショーを予定していたデパートは急遽、ユキのパリモードによるショーとの二本立てに変更。宣伝マンは隆子に「これであなたの株も上がるわけですよ」と上機嫌だが、隆子にしてみれば全く予想外の事態であった。

当日、先に始まった隆子のショーは盛大な拍手で締めくくられた。だが、続いて始まったユキのパリモードによるショーに、観客はみな目を見張った。月面、四次元、鏡、波飛沫、ハイウェイなど目も眩むような視覚イメージや立体的な舞台装置を駆使した斬新な演出。隆子のショーとは対照的に、リズミカルに躍動するモデルたち。ショーが終わり、会場割れんばかりの拍手の中、隆子は身動き一つする事が出来なかった。

控え室に一人戻る隆子。そこへユキが現れ、寂しげな表情を作りながら隆子に言った。「・・・清家さん、あなた独立なさるんですってね。残念だわ・・・」。そして隆子は、彼女の荷物を運んできた信彦から、相島が四日前に日本を発ったと聞かされる。自分が踏み越えようとした相手が最後の最後に現した狡猾な正体を目の当たりにして、隆子は放心状態で立ちすくんでいた。

「大人って、凄いなあ・・・」

隆子は追い立てられるように会場を後にした。しかし、彼女が持つ重いバッグの中には、パルファンで過ごした歳月で得たものが一杯詰まっている。彼女は決して後悔しているわけではなかった。

私はやっと仮縫が終ったばかりなのだ。これから、この経験にもとづいて、しっかり補正をするのだ。それから念入りな仮縫をもう一つして、要所要所の補正をして、本縫いして仕上げるまで----隆子の人生には何が起るだろう。


小林夕岐子さん出演場面

小林夕岐子さんの出演場面ですが、「令嬢」という役名から予想していた通りごくわずかでした(約10秒)。パルファンで松平ユキと小式部クミに白いドレスの仮縫をしてもらう役で、全く動きもなく、表情も変わりません。ただじっと斜め前方を見つめているだけです。しかし、立っているだけの姿からも、気品に満ちた上流階級のお嬢様という雰囲気が画面に溢れており、その存在感はさすがです。



パンフレットより。手前で針を拾っているのは内藤洋子さん、左手奥は山田はるみさん。


仮縫の途中、隆子がブラシを取りに部屋から出ますが、外で待っていた信彦から、夕べは何処に行っていたのかと詰問されます(※隆子はユキと相島と3人で音楽会に行っていた)。映画本編ではこの後すぐに相島画廊のカットに切り替わりますが、原作では隆子が部屋に戻った後、小林夕岐子さんが演じた令嬢とユキが会話を交わす描写があります。以下に当該部分を引用しますが、これを読むと、この「令嬢」はちょっと子供っぽい所もある可愛らしいお嬢さんという感じ。小林夕岐子さんと岸恵子さんのやり取りを画面で見たかったです。

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二度目の仮縫が終ったドレスに、軽くブラシを宛ててケバをとると、若いお嬢さんは鏡の中で満足していた。

「ライラック色の帽子を作ったのよ。フラワーハットの派手なの。この服にぴったりすると思うわ」

「まあ拝見させて頂とうございましたわ。お嬢さまはお肌が本当に白くていらっしゃいますから、紫系統はよくお似合いになりますわ」

「手袋は白でいい?」

「結構でございます。お帽子と揃えて薄い紫色もよろしゅうございましょう」

「私の持ってるベレンの革の手袋は紫色より藤色に近いのよ。ちょっとあの帽子とは揃わないな」

「お帽子と手袋を拝見して、中間の藤色のスカーフをお作り致しましょうか。ノーカラーが流行して
おりますけれど、それにスカーフをつけるのも今年の流行でございましてよ」

「そうねえ。だけどまた来るの面倒臭い」

「こちらで拝借にうかがいまして、このドレスの仕立上がりと一緒にお届け致しましょう」

「そう?じゃ、そうして頂だい」

鏡の中で気取っていた令嬢の姿勢が急に崩れた。間髪を入れずに小式部クミが脱がせにかかる。二度目の仮縫にはあまりピンを打たないから、これはそれほど神経を使う仕事ではなかったが、脱ぐ方はもうすっかりモデルのような仕事に倦きがきて、疲れも出て、あまり機嫌がよくないので、その方の神経は使わなければならないのである。

(以上、集英社文庫版「仮縫」p108〜p109より)


映画クレジット紹介(画面登場順)

岸恵子・内藤洋子/田村正和・神山繁・浜木綿子・平田昭彦/山田はるみ・藤あきみ・北あけみ・市川和子・岸輝子/ファニー・セブン 皆川たえ子・大田黒美波・坂本千桃・桐生かほる・徳峰真理・萩元克子・中沢直子/中島葵・仙北谷和子・小林夕岐子・高橋厚子・宮田芳子・望月千鶴・森今日子/内山みどり・田辺和佳子・若山真樹・佐川亜梨・川上大輔・佐竹弘行・勝部義夫/S・O・Sモデルエージェンシー 高楠布美子・水田リエ子・永井智津子・小原啓子・清水貴代子・林ヒロ子・前田圭子・貝りつ子・須田やよい・大島あきよ

山田はるみさんは、本作制作に当たって募集された「100万円スター・コンテスト」で見事6,212人の中から選ばれた期待の新人。ファニー・セブンは、同時に行われた縫い子役募集で選ばれた7人の新人。皆川たえ子(=皆川妙子)さん、大田黒美波(=大田黒久美)さんは画面中で発見できましたが、桐生かほるさんや高橋厚子さんはどこに出演していたのか私は分かりませんでした。

桐生かほるさんは前年のCX「バンパイヤ」に出演していますが、『華麗なる闘い』の縫い子役募集については本人の知らないうちに知人が書類を送り、第一次書面審査合格の通知が来て初めて本人が知りびっくりしたというエピソードがあります。(1976年9月14日付け京都新聞夕刊より。提供・NOBOさん)

高橋厚子さんについては、1969年作品でこんな扱いというのはやや不可解です(小林夕岐子さんについても同様ですが)。ちなみに同年の『ニュージーランドの若大将』でも高橋厚子さんはクレジットされているのですが、画面上では登場しませんでした。


パンフレット記事紹介

かいせつ
 表面は絢爛豪華に見えるファッション界の内幕を、するどいタッチでみごとにとらえた有吉佐和子原作「仮縫」の映画化です。
 服装学院の一学院から、ある日突然、パリの雰囲気そのままのオートクチュール(高級服装店)にとび込んだ主人公が、縫い子からはい上がり、上流社会へも出入りするようになる。その間、彼女の体を通りすぎる大人たち。ファッションへの夢。女の世界。はたして彼女はモード界のシンデレラになれるだろうか・・・・・・・。フランスの服装革命家アンドレ・クレージュ(パンタロン・ミニスカートの創始者)の作品が画面にあふれ、最新パリモードがいっぱいです。
 出演陣には、岸恵子を昭和32年の「雪国」(監督豊田四郎)以来12年ぶりで東宝撮影所に迎え、大女優の道を一歩一歩確実に歩む内藤洋子が、敢然と“大人役”に挑戦し、白熱した競演をくりひろげると共に、浜木綿子、市川和子、北あけみ等が共演する絢爛豪華な女性超大作です。
 また、今回は「仮縫」出演、100万円スターコンテストと銘打って一般から募集し、6,212人の中から山田はるみ(17歳)がみごとに金的を射止めて出演します。
 監督は「街に泉があった」でデビューした浅野正雄。製作はこの作品が第一回プロデュースの田中収と馬場和夫です。


製作にあたり・・・・・・田中収 新しい女性映画

 この映画の狙いは、20代前半という女性にとって最も変化の激しい、またその一生において最もなにかがなしうる時間における、一人の現代的で魅力ある女性像を描くことにある。・・・(中略)・・・一人の娘が社会人となり、女に変わり、一人前の女性となるには、その過程で女性特有のドロドロとした闘いが連続する。女性であれ男性であれ、その闘いの過程で、何かがし遂げられ、一見成功するということは一つの才能ではあるが、おおむねそれは錯覚の上に成り立ってはいないだろうか。錯覚による自己過信の繰り返し、それを見つめること、言葉を変えれば、それは人生の「仮縫」ということに通じるのではないか、というのがこの映画のテーマである。
 女性には多くの夢があり、それは常に華やかな彩りを添えて果てしなくふくらんでいく。それは女性としての魅力なのだが、この映画では、この女性の華やかな夢を強調し、それを女性に訴えるものにしたいと考えている。例えば、この映画では200点に及ぶ3,000万円相当のトップモードの衣装が登場し、特にファッションショーで使用される衣装は、アンドレ・クレージュが本年7月29日にパリで発表したものを、その翌日日本に空輸し直ちにこの映画で紹介するものである。この映画では、ファッションや流行をリードするという、映画がかつて持っていた魅力をいささかでも取り返したいものと願っている。


この映画のみどころ

この映画のみどころは、贅沢な場面が本物で再現されます。まず衣装は総数200点、そのうち、岸恵子の17点、内藤洋子の46点は三越の提供によるクレージュのものです。次に宝石は、浜木綿子のふんする本田夫人は、5.5カラットのダイヤ(1,800万円)を身につけています。最後に「お店」の家具は一点何百万円という本物のルイ王朝時代の家具を三越が提供いたしました。


100万円スターは大いそがし

 百万円スターに選ばれた山田はるみは、カメラテスト、メーキャップのしかたから基本的な演技研究、さらには発声の練習と、17歳のシロウト女優に課せられた課題は非常にきつい。
 まず砧の撮影所でカメラテストとメーキャップのやり方を教わった。「なにごとも勉強のためですから、とても楽しくできます」という彼女は学校(目黒の八雲学園高校)を休んで撮影所に通いつめた。
 また浜松町の東宝芸能アカデミーに通って基本的演技とセリフの勉強。
 この“特訓”もさすがにこたえたようだが、本人にいわせると「楽しい毎日でした」というのもみても、ファッションモデルをやっていたとはいえ、立派に大女優になる素質は十分にもっているようである。


山田はるみさん
パンフレットより。メーキャップ中の山田はるみさん。


水着姿の華麗なる闘い

 東宝の若手女優グループ“山田はるみとファニーセブン”が日本橋の三越屋上で水着のデモンストレーションを行なった。このグループは、平均年齢18歳の若さあふれる8人で結成され、山田はるみと、あとの8人(←kenro注・原文のまま)は一般公募で最後まで“スターの座”を競った人たち。会場にはいまにもはちきれんばかりの若々しい雰囲気があふれていた。


パンフレットより。写真右から山田はるみさん、一人おいて皆川たえ子さん、
桐生かほるさん、そして一番左が大田黒美波さん。



内藤洋子がラブシーン

 清純派代表女優内藤洋子がこの映画でめずらしくラブシーンを演じている。これまで画面でラブシーンをしたことがないという内藤は、ベテラン神山繁のうまいリードでスムーズにこのシーンに取り組んだ。といってもやはり彼女は“初体験”、浅野監督に「軽い気持ちでネ、芝居なんだから」とはげまされながらセットイン。そこは負けん気の内藤「みなさんは、わたしがベッドインするからって、とくに騒いでいるみたいだけど、べつになんともないわ。お芝居ですもの、かんたんにできると思う・・・・」といっていた。
 ところがいざ本番になると、上半身裸どうしで抱き合うはげしい場面のためどうしても動作がぎこちない。それでも、どうにか撮影が終わった。「だって、はじめてなんですもの・・・・」といって強がりの内藤も非常にこたえたようであった。



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