プロゴルファー祈子
第19話「継母の陰謀」


ストーリー
富士樹海での室田花子(松居直美)の事故死は、新聞でも大きく報じられた。記事の中で、3年前のゴルフ場での丸元利一郎撲殺事件との関連や、神島友平の無実を訴える祈子(安永亜衣)の姿が紹介されていたことから、丸元律子(岩本多代)は苛立ちを募らせる。祈子の動きを黙って見過ごせない律子は、失敗続きの野沢剣二(萩原流行)に見切りを付け、外国出張中の賢三(長門裕之)にも無断で、剣二の妹・冬子(松井紀美江)に祈子を始末するよう命じた。

花子の葬儀。鏡子(土家里織)は、花子の遺影に手を合わせた後、彼女との約束どおり、心を開いて自らの過去を祈子たちに語り始めた。・・・丸元物産の社長であった丸元利一郎(佐原健二)の一人娘として生まれた鏡子は、父のすすめで始めたゴルフに非凡な才能を見せ、将来はプロゴルファーになることを夢見ていた。その頃の鏡子は父が大好きで、また人を疑うことなど知らない純粋な少女だった。彼女が中学2年の時、当時の丸元物産専務で永尾姓を名乗っていた丸元賢三が、彼の秘書をしている今井ミキ(沢井孝子)という女を連れて自宅に現れた。その女が利一郎の再婚相手であった。

ミキは利一郎の前では大人しい妻を演じていたが、鏡子には厳しく当たるエキセントリックな女だった。鏡子にとって許せなかったのは、彼女の亡き母の形見である衣服や宝石などをミキがさも当然のように自分の物にしていることだった。ある日、鏡子は学校をさぼって家に戻ってきたところ、部屋で賢三とミキが密談しているのを目撃。彼らが利一郎を丸元物産社長の座から引き摺り下ろそうと画策していたことを知る。

それからしばらく経ったある日、ゴルフ場を使って利一郎の誕生パーティーが催された。そこではアトラクションとして、ミキの知人でもあるプロゴルファーの時田真介(石橋正次)がゴルフの曲打ちを披露することになっていた。時田がボールを打つ直前、鏡子は父の危機を本能的に察知。咄嗟に父の前に飛び出した鏡子の胸を時田のボールが直撃し、鏡子は倒れる。かつて鏡子が祈子の前で見せた胸の傷跡はその時のものだったのだ。

鏡子は奇跡的に命を取り留めたが、時田のボールが明らかに父の命を狙っていたと知った彼女は、ミキを許すことが出来なかった。退院後、不良少女に姿を変えた鏡子は、熟慮の上、罪を全て背負う覚悟で、ミキを殺そうと決意する。だが、現実にミキをベランダから突き落としてしまった瞬間、鏡子は人を殺す恐怖におののき絶叫した。鏡子がそれまで温めてきた夢や希望は粉々に砕け散り、彼女は全く別の人間になってしまった。その後の鏡子は、かつて花子が話したように、少年院へ送られ、やがて少年刑務所で服役することになる。・・・

続いて、今度は祈子が自分の掴んだ事実を鏡子に話した。時田真介が3年前の事件の真相を知っていたこと、そして彼が何者かに刺されて息絶える間際、神島友平は無実だと確かに言い残したこと。鏡子も祈子の話を信じて、事件のことをもう一度洗い直す意志を固める。葬儀の後、初七日が済むまでは花子の傍にいるつもり、という鏡子は、プロゴルファーになる夢を祈子に託して彼女を養成所に送り出した。

養成所に戻り、自室に入った祈子。一息ついてクローゼットを開けると、その中に潜んでいた謎の女が飛び出し、祈子にナイフを突きつけた。女の正体は、丸元律子の命を受けた野沢冬子であった。冬子は祈子をグラウンドの倉庫へ放り込んで気絶させ、ガソリンを撒く。冬子が火の付いたマッチを祈子に放った時、意識を取り戻した祈子は間一髪これをかわしたが、二人のもみ合いの中、周りは炎に包まれる。祈子が必死に冬子を振り払った時、炎が冬子の体に燃え移り、祈子は咄嗟にマットを被せて彼女の火を消し止めた。重傷を負った冬子を担いで祈子が脱出しようとすると、ドアの外に野沢剣二の姿が!剣二は冬子の姿を見て一瞬躊躇するも、祈子を阻止すべくドアに鍵をかけて二人を中に閉じ込めてしまう。

祈子は必死に体当たりしてドアを破り、冬子を抱えて脱出、剣二の手を逃れて走り去った。瀕死の冬子に呼びかける剣二だが、死期を悟った冬子は、自ら炎の中に飛び込んで行った。燃え落ちる倉庫を見つめて、剣二は祈子への激しい怒りに体を震わせた。

突然の火災発生に養成所は大騒動となり、もはや祈子たちが養成所に留まることは許されなくなった。直ちに信也は祈子を車に乗せ、立ち塞がる剣二を振り切って養成所を出発する。

信也と祈子は、信也のゴルフ部時代の親友・高木を頼って、彼が勤務する鬼怒川のホテルに向かった。焼け死んだ冬子も、実際には丸元家の犠牲になったのだと思うと祈子は辛かったが、いま目の前に広がる美しい自然は、彼女に新鮮な感動を与えた。束の間の安らぎではあったが、人の好意が嬉しく、なにより信也と共にあることが至上の喜びであったのだ。


ミニガイド
神島祈子は今、数々の忌わしい思い出との訣別のため、日本の秘境・鬼怒川峡谷に身を寄せています。厳しい自然の中、高倉プロの指導を受けて、ひたすらスイングの矯正に打ち込む祈子。仄かに揺れる蝋燭の炎のように、私の未来はか細いものなのでしょうか。その不吉な予感が、大崎冴子の運命を狂わそうとしているのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!


MEMO
冒頭で律子は、外国出張中の賢三に無断で冬子に祈子抹殺の指令を下すが、冬子が失敗し焼死したという知らせが剣二から入ると、今度は血気にはやる剣二に対して、賢三が戻るまで待って指示を仰げと言う。「祈子は恐ろしい女!」が口癖の律子だが、ずいぶん自分勝手。

鏡子の継母・今井ミキを演じた沢井孝子さんは、東宝女優・沢井桂子さんの実妹です。沢井孝子さんは高校3年時、1967年12月17日に京都祇園会館で開催された、着物姿の美を競う「1968年度 第1回『ミス美しい装い』コンテスト」で見事“ミス美しい装い”の栄冠に輝きました。当時のインタビューの中で、かつて東宝ニューフェイスに応募したことがあり、将来は東宝に入社してお姉さんのように女優になりたい、と抱負を述べています。ちなみに、身長162cm、B80・W60・H82とのこと(雑誌『美しい装い』1968年春・夏特集号、1968年3月28日発行)。

#17「命賭けた闇ゴルフ」で紹介された鏡子の回想シーンでは、継母・ミキをベランダから突き落とす鏡子は普段着姿だったが、今回描かれる同じシーンでは例のアイアンお祈もどき不良ルックになっている。しかしこの当時、祈子の方はまだ不良になっていない(祈子が不良化する原因となった父・友平の事件はこれより後)。ということは、5番アイアンを背負ったあの奇抜なファッションの元祖は祈子ではなく鏡子ということになりますが・・・。


土家里織さんの写真集「FIRST IMPRESSION」(近代映画社)

初出・2004年1月28日水曜日




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