プロゴルファー祈子
第1話「乳房に傷を持つ少女」


ストーリー
「神よ・・・!父の祈りの中、九死に一生を得てこの世に生を受けた祈子。祈る子と書いて祈子。今、祈子は神に何を祈るか・・・」

静かなゴルフコース。会社社長・野上敬太郎(中条静夫)と息子の信也(風見慎吾)、同じく会社社長の丸元賢三(長門裕之)と娘の亜矢子(生田智子)がプレーを楽しんでいる。あるホールで、信也がショットを放つと、突然、謎の少女がコースに飛び出し、手にした5番アイアンでそのボールを叩き落した。そして自らそのボールを、隣のコースでプレーしていた若い男の前に打ち込んだのである。少女はその男に向かって、彼に弄ばれた挙句自殺した或る娘のことを詰問する。「世間はお前たちの味方をするだろうが、私のこの傷が黙っちゃいないんだよ!」と少女は自分の乳房の上に残る大きな傷跡を見せた。5番アイアンを持つその少女は男を滅多打ちにし腕をへし折ってしまう。

胸に傷跡を持つこの少女、信也には見覚えがあった。「祈りっ子!」声をかける信也だが、少女は何も答えず、バイクに乗って現れた仲間たちと共に嵐のように去って行った。「・・・祈ちゃんだ。間違いない!」

――神島祈子、18才。彼女は神奈川県最大の非行グループ・北斗七星会の会長“アイアンお祈”として恐れられていた。だが、生まれついての不良少女がこの世にいるはずがない。話は3年前に遡る。

3年前、神島家は、野上敬太郎の所有する軽井沢の別荘で住み込みの管理人をしていた。その家族は、プロゴルファーとして各地を転戦する父・友平(岡本富士太)、母・保子(音無美紀子)、成績優秀な兄・徹(沢向要士)、そして妹の祈子。その頃の祈子は、プロゴルファーを夢見る明るい少女であり、野上信也を実の兄のように慕っていた。だが、ある日を境に、神島家を不幸のどん底に突き落とす大事件が立て続けに起こってしまう。

別荘でドライバーショットの練習をしていた信也がミスショットをし、祈子の左胸にボールを直撃させてしまった。倒れ込む祈子。それを見た徹は祈子が死んでしまったと短絡し、激昂して信也をゴルフクラブで殴りつけ重傷を負わせてしまう。幸い祈子の命に別状は無かったが、徹は大恩ある野上家の令息であり兄とも慕う信也を傷つけてしまったことで罪の意識に苛まれ、そのまま家を飛び出し行方をくらましてしまう。さらに追い討ちをかけるように、父・友平がゴルフ場でプレー中に殺人を犯したという知らせが入る。そして数日後、友平は塩沢湖で遺書を残して自殺してしまう。残された祈子と母・保子は、野上家から別荘を追い出されてしまった。

その時から、祈子は不良の道へと転落していったのである。

・・・・・・・・・・・・・・・

祈子と母・保子は人殺しの親子と罵られ、各地を転々とした挙句にようやく横浜に小さな家を借り、食堂を開いて生活をしていた。そこへ、3年ぶりに野上信也が訪ねて来た。保子はあの事件以来、野上家と連絡を絶っていたが、信也が探し当てたのである。ちょうど祈子も来ており、信也と祈子は改めて対面するが、祈子は信也と別の世界の人間になってしまっていた。祈子は仲間から、ライバルの暴走族・ブラックエンジェル出現の報を受けて飛び出してゆく。

埠頭に集結し一触即発状態となった祈子ら北斗七星会とブラックエンジェル。祈子は挨拶代わりに、地面に置いたゴルフボールにガソリンを撒いて火を付け、自慢の5番アイアンでフルスイング!命中した相手は火ダルマになって転げ回る。大乱闘が始まり、劣勢となったブラックエンジェルは退散。追おうとする北斗七星会。そこへ信也が駆けつけ、祈子に向かって、馬鹿な事はもうやめろ、と説得するが相手にされず、逆に袋叩きにされてしまう。「・・・祈ちゃん、プロゴルファーになるんだ、お父さんの夢を叶えるんだ!」。地面に突っ伏してしまった信也に構わず、祈子たちは引き上げる。だが、何故か祈子の胸の傷は再びうずくのだった。

その夜、祈子は父が自分に語りかける夢を見た。

「祈りっ子・・・お前は何をしているんだ。お前は私の祈りの中から生まれた女の子なんだぞ。お前にはゴルファーとしての天才的才能が秘められているんだ。祈りっ子、プロゴルファーになるんだ。全日本女子オープンに優勝して、お父さんの夢を叶えてくれ・・・!」

北斗七星会会長・神島祈子の心の奥底には、今もプロゴルファーへの夢が熱く秘められているのである。


ミニガイド(※次回予告。祈子が語ります)
神島祈子は、運命の荒波に身を委ねている少女です。あの優しかった父の殺人事件。それ以来、私は自分の素顔を見せない孤独な少女になりました。でも、そんな私をじっと見守ってくれる温かいまなざしに、私の心は揺れ動くのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!


MEMO
ご多分に漏れず?私も最初、「祈子」を「おりこ」と読んでいました(笑)。もちろん正しくは「れいこ」です。

ミニガイドでは、祈子(不良モード)のメーキャップ中の映像も流れます(貴重)。スタッフが「亜衣ちゃん、出番!」と声をかけると、「はーい!」と5番アイアンを手渡されて立ち上がる安永亜衣さん。

冒頭、ゴルフ場で男子学生を痛めつける祈子、蹴りがややお上品。

祈子のセリフに「おためごかしを言うんじゃないよ!」というのがありますが、「おためごかし」とは、「人の為にするように見せて実は自分の利益をはかること」。

祈子は不良になってからも時々は家に帰っていたのである。一方、兄の徹は消息不明のまま。

初出・2003年9月12日金曜日




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