おれは男だ!
第41話「花嫁は黒潮にのって!」


ストーリー
模擬試験の会場で丹下竜子(小川ひろみ)と出会った弘二(森田健作)は、そこで思いがけない告白を受けた。「私、あなたには報告しておこうと思って。今度結婚することにしたの」。彼女を迎えにやって来るという相手の男性は、竜子の祖父の一番弟子で、大学時代は彼女の家に下宿していた。今は小さな孤島で学校の先生をしているという。自分の青春を持って、彼と一緒に島へ行くと言う竜子に、弘二は「ヒロイズムだ、殉教者のつもりで悲壮感に酔ってそんな所へ行っても、所詮耐えられるものじゃない」と反対するが、竜子はきっぱりと言った。「小林君。私、相談してるんじゃないのよ。最初に言ったはずよ、報告だって。私はあなたに事後報告をしているだけなのよ」

竜子が自分のお婿さんと呼ぶ青年・村手(寺田農)が丹下家を訪れた。竜子は村手から届いた手紙を読んで、すっかり島に行くつもりになっていたが、村手は彼女に説き聞かせるように言った。島へ連れて行くことは出来ない、と。

村手は自分が直面している島での教育を竜子に語る。彼も島へ赴任した当時は、僻地教育にある種の理想の教育を見出そうとしていたが、それが夢物語であるとすぐに思い知らされた。かつては文明から取り残されたような島だったが、今では電気も通り、学校も新築され、昔に比べれば格段に生活は良くなった。それでも、まだ水は天からの貰い水で賄っているのが現状で、その生活は内地とは比較にならない。今なお島に蔓延する貧乏・無気力・無節操、そういったものに絶望して、教師もすぐ辞めていってしまい、島の人間は教師を信用してはいない。島に3年間いる自分でさえ、完全に信頼を得られているかどうか分からない。無論自分は島に骨を埋めるつもりでいるが、竜子を大切に思えばこそ、そんな島へ彼女を連れて行くことは出来ないというのだ。手紙に書いた竜子への気持ちは今も変わらない、しかしそれは手紙の上だけにしておこう、と言う村手。竜子は涙を浮かべて彼の前から走り去った。

意外な村手の答えに揺れ動く竜子は、弘二に剣道の稽古を申し込み、神社の境内で二人の激しい稽古が繰り広げられる。竜子は諦めが付かない自分の気持ちを竹刀にぶつける。そんな二人の様子を、村手も見ていた。

稽古を終えて竜子が帰った後、弘二は村手に問うた。

弘二「なぜ丹下君を泣かせたんです。あんな丹下君を見たのは初めてだ。丹下君は、あなたと一緒に島へ行きたいと言ってるんです」

村手「断ったんだよ。島の生活はあの子には耐えられないってね」

村手の答えに、弘二は一瞬拍子抜けする。弘二も、竜子が島へ行くことには反対で、彼は村手が竜子に島の良い面ばかりを吹き込んでいるのではないかと思っていたのだ。そんな弘二に村手は、竜子が島へ行きたがる本当の理由を語った。

「あの子は、今俺がいる島で生まれたんだ。・・・今から17年前、あの子の父親は俺と同じように島の教師をしていた。今でも便利とは言えないが、当時はまるで島流しに遭ったような生活だった。でもあの子の父親も母親も、島に骨を埋める覚悟で島民の指導に当たっていた。そしてあの子は生まれた。難産だったんだ。勿論当時は病院は無い医者も看護婦もいない。ようやくあの子は生まれたものの、母親は助からなかった。父親はそれで刀折れ矢尽きた。あの子を連れて内地へ戻ったんだ。父親はそのことを死ぬまで恥じていた。島を捨てたことが心残りだったんだ。俺が大学を卒業してその島へ行くと言ったとき、あの子の父親は亡くなる寸前だった。目に涙を一杯浮かべ、俺の手を握りしめ、ただ一言、ありがとうって言ってくれたんだ。あの子はその時、高校へ入ったばかりだった。そばでじいっとそれを見ていた。あの子が島へ行きたいって言うのは夢や憧れなんかじゃない。自分の父親のし残した仕事をしようと思っているんだ」

村手の話を聞いて、弘二は自分の思い込みの浅はかさを思い知らされる。だが、弘二と竜子の稽古を見ていた村手には、二人が良い友達であると分かっていた。「・・・君からも言ってやってくれないか。島のことは忘れ、新しい人生を歩むようにって」

翌日、村手は竜子と一緒に東京へ向かう。島での教え子が何人か東京で就職しており、彼らの顔を見に行くつもりだったが、村手の期待に反して、彼らは皆当初の就職先から姿を消していた。翌日も何人かを訪ね歩いたが、行く先々で既に辞めたという返事を聞かされる。

夜、丹下道場で弘二と竹刀を交える村手。その表情には悔しさが滲んでいた。「俺はこうやって剣道で奴らをしごいて魂を植え付けた。その魂が死ぬわけがない!」そう叫びながら弘二に打ち込んでくる村手だが、その剣が狂ったように荒れていることに弘二も気付いていた。完全に自信を失っている村手の姿を見て、弘二は単身上京し、彼の教え子の消息を追って奔走する。

次の日、丹下家で荷物をまとめていた村手の前に、彼の教え子・栗原シゲルが現れた。彼は何度か転職を繰り返して、今は日本そばの店で働いているという。村手の顔に希望が甦った。栗原は村手と竜子に御馳走をしたいという。彼が二人を案内した店には、村手の教え子達が勢揃いして待ち構えていた。栗原は村手を驚かせようと企画していたのだ。懐かしい教え子達の歓待を受け、彼らと抱き合って再会を喜ぶ村手。彼らの多くは職場を替わっており、村手は久しぶりの東京で人探しが不得意になっていたに過ぎなかったのである。栗原の消息を探し当てたのは弘二の功績であった。

その後、砂浜に飛び出し、相撲を取ったりして旧交を温める村手と教え子達。その爽やかな光景を見て、竜子はもう迷うことなく自分の意思を村手にぶつけた。辛くても、泣きたくなることがあっても、自分は島に行く、そんな決意をしている竜子に、村手も笑顔で賛同した。

竜子が島へ出発する日。「海の向こうに何があるか分からないけど、私やってみる!」竜子は笑顔で弘二、操、麻里に別れを告げた。竜子を乗せて岸を離れる船を、弘二たちはいつまでも見送っていた。


MEMO
今回は小川ひろみさんのクレジットが後ろの方(寺田農さんの前)に一枚看板で登場します。文字通り丹下竜子=小川ひろみさんが主役となるエピソードであり、焚き火を見つめる弘二の渋い顔の場面で連続して登場する「小川ひろみ」「寺田農」というテロップに、早くも期待が高まります。と同時に、『おれは男だ!』もいよいよクライマックスが近付いてきたという実感が・・・。

自分の教え子を訪ねて行った村手だが、彼らは皆最初の就職先を辞めてしまっていた。東京での現実を思い知らされた村手は、つい弘二に愚痴をこぼしてしまう。「俺が教えてきたもの・・・どんなに苦しくても我慢しろ、笑顔で朝を迎えろ、その魂を叩き込んだはずだ。・・・小林君、教育って一体何だ!俺が教えてきたものは一体何だったんだ!」。弘二は答えられません(だが翌日、彼は周囲に黙って上京し、村手の教え子の消息を探しに行きます)。今や衆議院議員となり、文部政務次官も務めた森田健作氏は、現在ならこの村手の叫びにどう答えるでしょうか。

劇中、「友達よ泣くんじゃない」のギターソロが4回使用されています。

【1】模試が終わったあと、港で弘二に結婚のことを話す竜子。
【2】竜子が弘二に結婚のことを打ち明けた日、各々自室で物思いにふける竜子と弘二。様々な思いが二人の胸に去来する様が描かれます。
【3】教え子を訪ねて、東京の街を行く村手と竜子。
【4】村手と竜子の東京探索2日目の様子と、稽古に打ち込む弘二の姿が交互に映し出される。曲が次第に途切れそうになり、村手の希望が一つまた一つと崩れていくかのよう。

また、砂浜で村手と教え子達が遊ぶシーン、弘二はどこからかギターを取り出し、弾き語りで「友達よ泣くんじゃない」を披露します。このプレスコバージョンは残念ながらマスターテープが存在しないとのことで「ミュージックファイル」CDにも収録されていません。

ラストシーン、丹下竜子を見送る弘二の表情の合間に、島へ行くことを弘二に反対されて困惑していたときの竜子の表情が数回挿入されます。そして、竜子の姿が完全に遠くへ行ってしまった後の弘二の顔、そこには何とも言えない険しさが滲み出ていました。剣道のライバルとしてだけでなく、弘二も好意を抱いていたかもしれない存在である竜子との別れに臨んで、彼の胸をよぎるものは・・・。BGMの「さらば涙と言おう」が熱く心に響きます。



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