おれは男だ!
第23話「ナツコ・オンステージ!」


ストーリー
偶然見たアングラ演劇に強い衝撃を受けた岩田治(石橋正次)は、柔道同好会の会長を投げ打って、すっかり演劇にかぶれていまう。「今までやってきたことが急に馬鹿馬鹿しくなったんだ。生きたい様に生き、やりたいことをやる!」。岩田は小野夏子(小野千春)に、自分の芝居の主役を引き受けてくれと頼み込む。

岩田のミュージカル(と称したアングラ芝居)の公演で体育館を使用することにつき、生徒会で議論が行われる。岩田の芝居は破廉恥で青葉の風紀を乱すものだ、と演劇部長の河合(沢久美子)ら女生徒は猛反発。だが、議長の夏子は意外な発言をする。

「私は台本を読みました。岩田君の話も聞いて、稽古も見たわ。岩田君がしようとしている芝居は真面目なものよ。決して破廉恥なものではないわ。その証拠には、私は岩田君に頼まれてミュージカルの主役を引き受けることにしました」


その日の夕暮れ、海岸を二人で歩く岩田と夏子。

岩田 「小野君。俺、まだ分からないんだ。どうして急に君が芝居に出てくれるつもりになったのか

夏子 「私にだって分からないわ。・・・どうして私なんかを主役に選んだの?うちの学校には私なんかよりも綺麗な女生徒が沢山いるでしょ?」

岩田 「だから言ったろ、俺は初めから君のことを頭において、この芝居を考えたんだ」

夏子 「でも、私ちっとも美人でもないし、魅力的でもないわ」

すると岩田は、そっと夏子の眼鏡を外して、言った。

岩田 「小野くん・・・君、とっても綺麗だよ」

夏子 「綺麗?」

岩田 「うん、綺麗だ。すごく綺麗だ!」


夏子は戸惑いを隠せない。

夏子「・・・私ね、今まで男の人から“綺麗だ”なんて言われたの初めてなの」

岩田 「それは君自身そう思おうとしないからだ。生徒会長という殻に閉じこもって、人を寄せ付けようとしないからだ。君はただの女だ。ただの可愛い女の子なんだ」


夏子の顔をじっと見つめながらそれだけ言うと、岩田は海へと駆け出した。そして、夏子の方を振り返って、叫んだ。

「好きだぁー!!!」

そして、自分の書いた台本にあるセリフを夏子に投げかけた。

岩田 「君の青春は何だ!言うんだ!本当のことを言うんだ!」

夏子 「それは・・・それは恋よ!人を愛することよ!」

岩田 「そうだ!それが分かっていながら、どうして君は本当の自分を見せようとしないんだ!脱ぐんだ!みんな脱ぐんだ!裸の自分を見せるんだ!」


服を脱ぎ始める岩田。そして、夏子も・・・ハ、ハクション!・・・夜の海岸は寒かった。

次の日、海岸での二人の稽古風景が三流ゴシップ紙にスッパ抜かれ歪曲されたインチキ記事が掲載された。青葉高校内でも問題になり、弘二(森田健作)と操(早瀬久美)は、岩田と夏子を問いただした。だが夏子は、やましいところはない、ミュージカルはあくまで実行すると宣言する。

「・・・やるわ。いくら学校だって、私たちの自由意志を束縛はできないわ。私ね、今度の芝居の稽古をしてるうちに、今まで気が付かなかった色んなことが分かってきたの。ううん、気が付かなかったんじゃないわ。気が付こうとしなかったのね。考えることを避けてたのよ。私、そんな生き方が嫌になったの。生きたい様に生きる。やりたいことをやってのけ、思いのままに生きる・・・」

だが、岩田と夏子の願いもむなしく、学校の職員会議でミュージカル中止が決定されてしまう。そんな頃、例のデタラメ記事を書いた記者が青葉高校にやって来た。そこに居合わせた弘二は、記者と大立ち回りを演じて、1週間の自宅謹慎処分を受けてしまう。だが、弘二の働きで、記事がデタラメであることが実証され、生徒たちの誤解は消えた。

夏子は、記事の真偽はともかく、新聞沙汰になって周りを騒がせた責任を取って、生徒会長を辞任したいと申し出た。生徒たちは翻意に努めるが、実は夏子は、退学する意思を固めていた。父親の病気が重くなり、彼女は働かねばならなくなったのである。岩田たちが芝居の稽古をしている部屋にもその知らせが飛び込んできた。

夜の海岸、暗闇の中で向き合って座っている岩田と夏子。

夏子 「そんな深刻な顔しないでよ。私、ちっとも悲しんでなんかいないわ。私、自信を持って生きていくの。だって、あなたが保証してくれたじゃないの。『君は美人だ』。・・・私、どうしてもやめる踏ん切りがつかなかったの。あと半年で卒業でしょ。でも、あなたとの芝居の稽古をしているうちに、やっと心が決まったの。あなたのおかげよ」

岩田 「小野君・・・」

夏子 「私、好きよ。岩田君のこと」

岩田 「どうして・・・どうして君みたいな人が学校をやめなければいけないんだ・・・・!」

夏子 「こっち向いて・・・・あなたとのミュージカル、良い思い出になるわ。さあ!」


夏子は二人だけのミュージカルを開演した。

夏子 「私の青春!それは恋することよ!人を愛することよ!岩田君、さあ!」

手を差し伸べる夏子に応えて、岩田も、全ての思いを振り切るようにミュージカルの世界へ飛び込んだ。

岩田 「そうだ、その通りだ!それが分かっていながら、君は、どうして素直にならない!なぜ裸にならない!・・・脱ぐんだ!みんな脱ぐんだ!こういう風に!脱ぐんだ!」

服を脱ぎ始める岩田。夏子も岩田の言葉のままに裸になった。一糸纏わぬ夏子の姿が夜の海面に映え、夏子は岩田に全てを委ねた。

夏子 「これが私よ・・・裸の私よ!」



しばらく経って、一人海岸にうずくまっている岩田。彼らを心配して駆けつけた弘二が声をかけると、岩田はあふれる衝動を必死に堪えながら言った。

「・・・小林、ミュージカルは終わったよ・・・ついさっき、たった一回こっきりの公演・・・大成功、大成功だったよ・・・!」

それだけ言って、海へ飛び出し、体全体で思いの丈をぶちまける岩田。そんな彼の姿を見て、弘二にも込み上げてくる思いがあった。

「岩田、とうとう一回も見せなかったな・・・馬鹿野郎!岩田の馬鹿野郎・・・!」


翌日の朝、町の雑踏の中に、工場へ出勤する夏子の姿があった。そして、青葉高校には、再び柔道同好会で汗を流す岩田の姿があった。


MEMO
月並みですが、やはりこのエピソードは小野千春さんに尽きます。眼鏡を取った小野さんは割と「濃い目の美人顔」だと思いました。眼鏡をかけている顔とのギャップがやっぱり魅力的です。

夏子の退学はやや唐突な展開とも思いましたが、彼女がぞろぞろと10人以上も子供を引き連れて「これからこの子たちをお風呂に入れなきゃいけないのよ」と岩田に言うシーンが、その家庭事情を示唆する描写だったと考えられます。

ちょっと垂れ目でお人形さんのように愛くるしい沢久美子さんが演劇部部長・河合貞代役でゲスト出演。

「俺は青葉高校剣道部キャプテン・小林弘二だ!」と、ゴシップ紙の記者を前に大見得を切る弘二。大地にすっくと立つ姿を仰角で捉え、それこそ初代ウルトラマンにも匹敵するカッコ良さ。モリケン以外には絶対に不可能な驚愕のカットです。




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