おれは男だ!
第15話「女は女 男じゃないよ!」


ストーリー
教育実習生として青葉高校にやって来た野村早苗(横山リエ)。彼女は、弘二(森田健作)の兄・一郎(河原崎長一郎)の大学時代の後輩であった。だが小林家を訪ねて来た早苗を見た一郎は、「君はいつまで僕を追いかけて来るんだ!帰ってくれ!」と切り出す。彼女は一郎の幻影を追って、青葉高校へ教生に来たのだった。早苗には、大学時代の一郎が四つ葉のクローバーに見えたという。だが今の一郎は、俺は世間並みのつまらない卑怯な人間だ、君にはもっと他に相応しい人がいる、と自ら口に出すような男であった。一郎と早苗のそんなやり取りが吉川操(早瀬久美)の耳に入り、それが原因で一郎と美穂(秋山ゆり)の間にも誤解が生じてしまう。

弘二は早苗から、二人の大学時代の話を聞いた。一郎は当時、大学当局の方針に対抗すべく、あるグループを作っていた。だが就職の時期が近づくと、メンバーは一人、二人と抜けていった。もともと男勝りで気性の激しい性格だった早苗は、脱落していく者たちを「それでも男なの!」と罵ったが、一郎は、そんなことをしている暇があったら自分のグループで一緒に闘え、と彼女を怒鳴りつけたというのである。そして一郎と早苗だけが最後まで残り、闘いにも勝った。一郎は自分の信念を最後まで貫き、男の強さと言うものを見せてくれた人だと早苗は言うのである。だが、卒業してからの一郎はウミウシをいじり回して楽しんでいるような人間に変わってしまった。

翌日、早苗は弘二を誘って飲みに繰り出すが、帰り道に不良学生に絡まれ、持ち前の腕っ節の強さで大立ち回りを演じてしまう。女性の教育実習生が男子生徒を盛り場へ連れ出し、しかも乱闘事件を起こしたと新聞で大きく報じられ、早苗は教頭(三谷昇)から実習打ち切りを通告される。だが、肝心の一郎が早苗を庇ってくれないため、弘二は教頭に、自分が先生を誘ってケンカも自分が吹っかけたのだと嘘を言って早苗を救おうとする。

放課後、体育館で竹刀を振っている弘二の前に一郎が現れ、なぜ嘘をついたのかと弘二に問いただした。弘二は自分の思いを竹刀に叩きつけながら言った。兄貴はなぜ野村先生を助けてやってくれないんだ、先生のために一日だけでもいい、強い男になってくれ、四つ葉のクローバーになってくれと。

次の日、早苗は実家に帰る支度をしていた。彼女の下宿先を訪れた弘二も荷造りを手伝い、荷物を引いて引越し業者の所までやって来た。その頃、一郎はレオ洋裁店で仕事中の美穂を呼び出していた。美穂は今回の一件から、一郎との結婚を白紙に戻そうとさえ考えていたが、この時の一郎の言葉は美穂の誤解をも押し切った。「僕と結婚してください!・・・結婚してくれますね、たとえ僕が学校をクビになっても・・・!」。そして一郎は早苗たちの前に息急き切って駆けつけた。彼は早苗に、学校は辞めなくてもいい、と興奮しながら言った。教頭を脅かして、彼女を辞めさせるなら自分も教師を辞めると言ってやった、そうしたら若い先生たちもみんな自分の味方をしてくれた、と。

翌日は早苗の最後の授業だったが、教室は閑散としていた。生徒たちは皆、早苗の例の新聞記事を鵜呑みにして、授業をボイコットしたのだ。弘二は校庭で、操を始めとするボイコット生徒たちに反論する。早苗の狭い一面だけを捉えて短絡的な行動を取る彼らに、弘二は、自分が見た早苗のありのままの印象を語った。そして弘二は一人教室に戻り、席に着いて早苗を待った。教室に入るなり、意外な光景に驚く早苗。だが弘二は「授業を始めてください。僕は先生の授業が受けたいんです」と言って、自ら教科書の詩を読み始めた。やがて、その詩の続きを読みながら、操が教室に入って来た。その後から、生徒たちは続々と詩を読みながら教室へ戻って来た。生徒全員が朗読する一つの詩が教室を包み、早苗の最後の授業を彩った。

六月

どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終わりには一杯の黒麦酒
鍬を立てかけ 籠を置き
男も女も大きなジョッキをかたむける

どこかに美しい街はないか
食べられる実をつけた街路樹が
どこまでも続き すみれいろした夕暮は
若者のやさしいさざめきで満ち満ちる

どこかに美しい人と人との力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となって たちあらわれる


(引用文献/童話屋・刊 茨木のり子詩集『見えない配達夫』より)


MEMO
大学時代の一郎について、早苗が弘二に語るシーン。弘二も思わず「それは、本当にうちの兄貴の話ですか?」と彼女に聞き返してしまうほど、現在のウミウシと戯れている“まんぼう先生”からは想像もつかない一郎の過去。早苗にとってそんな一郎の姿は、どんなに強がって見せてもやはり女は女、男じゃないということを自分に知らしめた存在として、心の奥底に深く残っているのでした。

冒頭、椅子に仕掛けがしてあるとも知らずに早苗が腰掛けた瞬間、椅子が壊れ、その時「何が“見えた”」のか?。「愚劣愚劣愚劣愚劣愚劣愚劣!!!!!」と机をバシバシ叩きながらまくし立てるエキセントリックな早苗。彼女はその後名乗り出た剣道部員の近藤(佐藤明彦)を引っ掴むとバチンバチンバチンバチンバチン!と機関銃のように往復ビンタを浴びせる。すごい迫力でした。

弘二と早苗が盛り場へ行く場面で、「花園トルコ」という看板が映りますが、この一点を捉えて本作を欠番にするような「愚劣」なことはしてほしくないですね。

野村早苗先生は第42話「お命頂戴 ウーマン・リブ!」で再登場し、今回のエピソードも踏まえて、彼女のその後の生き様が更に掘り下げられて描かれます。女性の強さって一体何だ?ウーマンリブって何だ?42話のラストでは弘二自ら視聴者にこう問い掛けます。繰り返し見れば見るほど「おれは男だ!」の世界は深みを増して行きます。



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