マドモアゼル通り
第25話「青春のデザイン大賞」


キャスト
紀比呂子/黒沢のり子/徳永れい子/山田はるみ/渡辺ふみ子・遠藤孝子/水野マリア・鈴木ヒロ・河洋子・(ナレーター)中村正/藤山律子・若尾義昭/岡本信人・小林幸子/山口哲也/桜むつ子


ストーリー
街でエミー中原(藤山律子)に出会った裕子(紀比呂子)。エミーは明日アメリカへ帰ると言う。彼女はデザイン大賞に出す作品は既に完成させており、この次日本へはデザイン大賞を頂きに帰って来る、と自信満々である。裕子は刺激を受けるが、内心、気持ちは苛立っていた。広美・ヒデコ・咲子(山田はるみ)らも既に作品作りに取り掛かっているのに、自分はまだデザインすら思い浮かばない。そんな時、黒沢(山口哲也)から電話があり、裕子は食事に誘われる。

日本庭園の中を歩いている裕子と黒沢。裕子には和服地でイブニングドレスを作るというアイデアがあった。下部で祖母から、日本の古い伝統の中には良いものがあると聞いた時からずっと考えていたものだが、これだけでは単なる思い付きに過ぎない。何を表現するかが問題だ。その時、小鳥のさえずりと共に、激しく流れ落ちる人工の滝が裕子の目に飛び込んできた。「水だわ・・・流れる水、人生は流れる水に似て・・・そうでしょ、先生!流れる水を表現してみたら・・・!」

裕子はその日から夢中でデザインに取り組んだ。滝の中に見出した、優雅で力強い日本的な美を何とか表現しようと必死だった。そしてデザインが完成すると、仕事の合間を縫って作品作りに没頭する。やがて締切日当日、裕子が作品を何とか完成させると、時計はもう11時15分を回っていた。締め切りは正午だ。タクシーが中々捕まらず裕子は焦るが、偶然、仕事中の荒川ミツオ(岡本信人)の車が通りかかり、裕子は彼に送ってもらって何とか提出に間に合った。

それから一ヵ月後、日本デザイン大賞の発表が東京で開かれた。まず、第一次審査に合格した10人の氏名と作品が紹介される。最初に名前が呼ばれたのはエミー。以下、次々に合格者が発表され、咲子の名前も呼ばれた。そして最後に裕子の名前も発表され、感激する裕子だが、必ず来ると言っていた黒沢の姿が会場に無いことに気付く。やがて裕子が案じた通り、黒沢が会場へ来る途中に怪我をして入院したという知らせが飛び込んできた。裕子は第二次審査の発表も待たずに病院へ急ぐ。病室にはミツオも来ており、彼によると、黒沢のジープにトラックが出会い頭に突っ込んできたという。命に別状はないが、全治一ヶ月の重傷である。ベッドに横たわる黒沢は裕子にデザイン大賞の結果を尋ねるが、彼女が審査の途中で抜け出してきたと聞くと、「馬鹿!なぜ最後まで居なかったんだ」と叱りつけた。だが、裕子には黒沢の容態の方が心配だったのだ。

その頃、会場では第二次審査の結果発表が進んでおり、既に2位・3位を咲子とエミーが受賞していた。そして大賞の発表。「第1回日本デザイン大賞は、イブニングドレス“流れる水”を出品された・・・三上裕子さん!」司会者が読み上げると、客席のスミ子(黒沢のり子)や広美(徳永れい子)たちは飛び上がって喜ぶが、当の裕子が席に居ない。その時、チエ(小林幸子)が即興で代理として壇上に上がり、トロフィーを手に取って会場を大いに沸かせた。

やがて、病院にいる裕子にも大賞受賞の知らせが入った。「えっ、私が・・・」聞いた瞬間、裕子は一瞬我を忘れて呆然となるが、たちまちその目に涙が溢れ出る。様々な思いが裕子の胸に去来し、彼女は黒沢のベッドに顔を埋めて泣いた。

デザイン大賞の発表が終わり、裕子は会場の外で咲子が来るのを待っていた。「三上さん・・・」咲子は、裕子に向かって言った。「おめでとう。私は負けたの。これは事実よ。私、事実は率直に認めるの」。意外な言葉に裕子は顔を綻ばせつつも、首を振って言った。「デザイナーとしての勝負はまだこれからよ。私、片岡さんにだけは一生負けないように頑張るわ」「私だって・・・!」。二人は固い握手を交わした。

マドモアゼル通りを歩く裕子と咲子の前に、エミーが現れた。「三上さん、おめでとう。今度は私の完敗だった。でも、この次は世界の檜舞台で会いましょう」。力強く頷く裕子と咲子。エミーは来月からパリの“ピエールローラン”の店でスタッフとして働くことが決まっているのだ。エミーを見送った後、咲子は明るい笑顔で裕子に言った。「三上さん、さよなら。また会いましょう」

エミーはパリへ去り、そして生涯のライバル・片岡咲子も、いま裕子に別れを告げた。だが、ファッションに賭けた華やかな闘いは、決して終わったのではない。昨日よりも大きく広い世界、新しい明日に向かって、裕子は一人マドモアゼル通りを歩いて行く。高く、大きく胸を張って。 (完)


MEMO
第1話から宿命のライバルであった裕子と咲子が、遂に固い握手を交わします。全25話を通じて最大のテーマであった二人の対立も、最後は爽やかな幕切れとなりました。「三上さん、さよなら。また会いましょう」と裕子に別れを告げるシーンで咲子が見せた清々しい笑顔は忘れられません。そして裕子の許から去って行く咲子の後ろ姿・・・1話から今回に至るまでの波乱に満ちた展開が脳裏を駆け巡り、胸が熱くなる名場面です。

エミーの言う“ピエールローラン”とは、ピエールカルダン+イブサンローランという架空のブランドでしょう。

デザイン大賞の発表会場、咲子と一緒に現れたのは、さち子(遠藤孝子)のみ。小野沢孝子(麻乃茉莉子)は出品しなかったのか?。ちなみにチエは今年の出品を見送ることを自ら語っています(24話)。

咲子とエミーのどちらが2位・3位なのかは劇中では明らかにされません。脚本上、咲子とエミーのどちらを上位に持ってくるかは容易に決しがたいでしょうが、逆に、二人の優越が明確になるとラストで裕子・咲子・エミーの三者が揃うシーンが処理しづらくなる。即ち、裕子との対比において咲子とエミーは対等に見えた方が都合がいい。才賀明氏の脚本は、裕子が席を外している間に2位・3位が決まってしまっていたという手法によって、この辺りの問題を上手くクリアーしていると思います。

エミーの日本での住所は東京都練馬区横田第一マンション内。咲子と裕子の住所は東京都世田谷区大原町ヴィラカトレア内。

初出・2001年11月29日木曜日




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